2017 Fiscal Year Research-status Report
乳癌におけるHER2不均質性の臨床的意義に関する研究
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17K10567
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
堀井 理絵 公益財団法人がん研究会, 有明病院 病理部, 医長 (20446272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 太 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 臨床病理担当部長 (50222550)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳癌 / HER2 / 腫瘍内不均質性 / Gene-protein assay / 抗HER2療法 / 効果予測因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、トラスツズマブを含む術前薬物療法を行ったHER2陽性乳癌102例を対象に、Gene-protein assay (GPA)を用いて評価したHER2の不均質性と術前薬物療法の治療効果との関連を検討した。まず、GPAの妥当性を確認した後に解析を行った。 (1) 対象の変更:当初は2007-13年に手術が施行されたHER2陽性乳癌95例を対象とする予定であったが、2007-8年の対象が遠隔転移を伴う症例のみであったため、手術期間を2009-14年に変更し、このうち治療前生検でGPAを用いたHER2検査が施行可能な102例を対象とすることにした。 (2) GPAの妥当性:2009-11年に手術を施行した53例を対象に、GPA、免疫組織化学法(IHC)、dual in situ hybridization(DISH)を用いてHER2検査を行い、その結果を比較した。GPAによるHER2検査は、IHC、DISHいずれとも高い診断一致率を示し、妥当であることが確認された。 (3) 治療効果との関連:102例の検討で、HER2遺伝子増幅細胞の割合(遺伝子型の不均質性、P=0.002)やHER2遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の割合(エピジェネティックな不均質性、P=0.007)が術前薬物療法の病理学的完全奏効(pathological complete response; pCR)とロジスティック回帰を用いた単変量解析で有意に関連していた。さらに、病期、ホルモンレセプター、核異型度、Ki67を加味した多変量解析においても、HER2遺伝子増幅細胞の割合(P=0.003)やHER2遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の割合(P=0.009)がpCRと有意に関連していた。したがって、HER2陽性乳癌においてHER2の不均質性が抗HER2療法を含む薬物療法の効果予測因子であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に予定していた対象症例の抽出、臨床情報の収集、病理標本の作製、HER2 GPA検査の妥当性の確認、組織型・核グレード・ホルモンレセプターの評価は終了した。平成30年度に予定していたGPAを用いたHER2不均質性の評価のうち、治療前生検標本で癌細胞ごとにタンパク発現や遺伝子シグナル数を評価する作業は終了した。このデータを用いて、HER2遺伝子型の不均質性の指標である遺伝子増幅細胞の割合とエピジェネティックな不均質性の指標である遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の割合を算出した。平成31年度に予定していたHER2不均質性と臨床病理学的因子との相関性の検討のうち、遺伝子増幅細胞の割合や遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の割合と術前薬物療法の治療効果との関連性については検討を終了した。現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の検討を予定している。 (1) 予後解析:遺伝子増幅細胞の割合や遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の割合と症例の予後との関連を検討する。 (2) 不均質性に関する他の指標の検討:遺伝子型とエピジェネティック、両方を合わせた不均質性の指標として、遺伝子とタンパクの発現状況を組み合わせた細胞型の混ざり具合を算出し、その臨床的意義を検討する予定である。各癌細胞は、遺伝子とタンパクの発現状況を組み合わせてHER2発現の低い方から順に6段階に分類している(HER2 score 1-6)。遺伝子とタンパクを組み合わせた不均質性の指標として、このHER2 scoreの各症例における分布(標準偏差)を考えている。HER2 scoreの標準偏差と術前薬物療法の治療効果や予後との関連を検討する。 (3) 遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の発生機序:平成29年度の研究で、HER2陽性乳癌の中にHER2遺伝子が増幅しているにもかかわらず、HER2タンパクの過剰発現がみられない癌細胞が存在し、それが薬物療法の効果予測因子であることが明らかとなった。すなわち、HER2遺伝子増幅を示す乳癌においてHER2タンパク発現の低下は、抗HER2療法の耐性機序のひとつである可能性が示唆された。そこで、この癌細胞に着目し、その発生機序を解明したい。まず、この癌細胞におけるHER2 mRNAの発現状況をin situ hybridizationで検索する予定である。 (4) 薬物療法後切除標本や再発巣でのHER2検査:平成29年度は対象例の治療前生検標本を用いてGPAを行い、不均質性を含むHER2発現状況を評価した。薬物療法後の切除標本や再発巣でもGPAを用いたHER2検査を行い、HER2不均質性の継時的変化(時間的不均質性)と臨床病理学的因子との関連性を検討する予定である。
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Research Products
(2 results)