2018 Fiscal Year Research-status Report
乳癌におけるHER2不均質性の臨床的意義に関する研究
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17K10567
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
堀井 理絵 公益財団法人がん研究会, 有明病院 病理部, 医長 (20446272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 太 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 臨床病理担当部長 (50222550)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳癌 / HER2 / 腫瘍内不均質性 / Gene-protein assay / 抗HER2療法 / 効果予測因子 / 予後因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、以下の研究成果が得られた。 1)HER2不均質性と予後との関連:単変量Cox回帰分析で、HER2遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の割合(エピジェネティックな不均質性を想定)が遠隔再発と有意に関連していた(P=0.044)。HER2遺伝子増幅細胞の割合(遺伝子型の不均質性)と遠隔再発(P=0.056)や生死(P=0.066)、HER2遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の割合と生死(P=0.051)との関連は境界域であった。 2)HER2不均質性の新しい指標:遺伝子増幅とタンパク発現状況を組み合わせて、細胞毎のHER2発現状況を6段階にスコア化し、全細胞におけるスコアの標準偏差をHER2不均質性の新しい指標と定義した。この指標は、術前薬物療法の治療効果と有意な負の相関を示したが(単変量:P<0.001, 多変量:P=0.001)、予後との関連はみられなかった(遠隔再発:P=0.719, 生死:P=0.78)。 3)HER2遺伝子増幅細胞においてHER2タンパク発現が減弱する機序を明らかにする目的で、HER2遺伝子増幅・タンパク陰性細胞におけるHER2 mRNAの発現状況をin situ hybridization法で検索した。HER2遺伝子増幅・タンパク陰性細胞ではHER2 mRNAが高発現していた。このため、HER2遺伝子増幅・タンパク陰性細胞において、ヒストン修飾やDNAメチル化によりHER2遺伝子の転写が抑制されている可能性は低いと考えられた。また、HER2遺伝子コピー数が増加している状況で、新たなHER2遺伝子変異でタンパク発現が抑制されることも考えにくい。一方、HER2遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の割合は、ホルモン受容体陽性と正の相関、HER2遺伝子コピー数と負の相関を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に予定していたGPAを用いたHER2不均質性の評価が終了し、その治療効果予測因子、予後因子としての意義の検討も行った。HER2不均質性を反映する一つの統計指標についても検討を行った。また、HER2遺伝子増幅・タンパク陰性細胞の存在が確認され、その治療効果予測因子としての意義が見いだされたことから、当初、予定していた研究に加えて、HER遺伝子増幅細胞においてHER2タンパク発現が減弱する機序を解明する研究にも着手した。現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の検討を予定している。 1)HER2不均質性を反映する他の統計指標の検討:多様性の指標として報告されているSimpson indexやShannon indexがHER2不均質性の新たな統計指標として用いることができるかどうかを検討する。各症例で値を算出し、その治療効果予測因子、予後因子としての意義を検討する。 2)術前薬物療法後の遺残癌や再発巣でのHER2不均質性:薬物療法後の切除標本や再発巣生検標本のGPA検査を施行した。その評価および治療前針生検標本との比較を行い、HER2不均質性の継時的な変化(時間的不均質性)と臨床病理学的因子との関連性を検討する。 3)HER2とエストロゲンレセプター両方に関連する因子を念頭に、HER2遺伝子増幅細胞においてHER2タンパク発現が減弱する機序の解明を進めたい。具体的な方法や項目については、現在、文献検索を行い検討している。 4)今回の解析に用いた細胞毎のHER2遺伝子シグナル数やタンパク発現状況は、研究代表者がすべて目視でカウントした。HER2遺伝子シグナル数やタンパク発現状況を画像解析により評価し、その有用性を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は主に臨床的意義があるか否かのデータ解析を行った。解析は、研究代表者及び研究協力者によって行われ、それにかかわる支出はなかった。また、これまでの結果を論文化する予定であったが、年度末に間に合わず、論文掲載にかかわる費用の支出もなかった。次年度は、論文化に係る費用に加えて画像解析に係る費用の支出が見込まれる。
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Research Products
(1 results)