2020 Fiscal Year Research-status Report
病理標本を基盤とした形態診断と分子診断を統合した新しい乳癌再発予測モデルの開発
Project/Area Number |
17K10568
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
大迫 智 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 研究員 (70535442)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 乳癌 / 予後因子 / 病理診断 / 免疫染色 / 組織マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌の術後薬物療法では、各患者のベースライン再発リスク(無治療であった場合の再発率)を正確に推定することでその患者に適した治療選択が可能となる。日常臨床での再発リスク評価には、年齢、腫瘍径、グレード、ホルモン受容体(ER、PgR)、HER2、Ki67などが用いられるが、実地臨床で評価に悩むことも多い。日本人乳癌の再発リスク予測モデルができると、治療選択の個別化に貢献できる。 このようなモデルを作成するためには、術後薬物療法が標準的ではなかった年代の症例を多数集積する必要がある。しかし、多数の病理検体を通常のwhole sectionで薄切・染色すると、膨大な労力・費用が必要である。免疫染色などを効率的に行う技術として組織マイクロアレイ(TMA)があるが、腫瘍内不均一性の高いマーカーや免疫環境のマーカーでは、whole sectionでの判定を反映しないことが知られている。 そこで今年度は、腫瘍と免疫微小環境の双方を効率的に評価できるTMAの開発・検証を行った。乳癌246症例を対象し、浸潤巣の辺縁から2mm径コアを3本採取した3コアTMA、浸潤巣の中心部から2mm径コアを1本採取した1コアTMAの2種類を作製した。腫瘍(ER、PgR、HER2、Ki67)、免疫環境(PD-L1、腫瘍浸潤リンパ球)の6マーカーにおける、代表切片whole sectionとTMAの一致度を探索した。 その結果、3コアTMAは、腫瘍と免疫環境双方のマーカーにおいて、代表切片whole sectionと非常に良好な一致度を示した。また、1コアTMAは、腫瘍内不均一性の低いバイオマーカーにおいて良好な一致度を示した。3コア、1コアTMAを用いることで、労力と費用を23分の1、71分の1に削減可能である。今後これらのTMA作製手法を活用して、多数症例のマーカー評価を効率的に行い、予測モデル作成を進めたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究初年度から3年間、施設内の病理医の退職などによる研究代表者の病理診断業務の増加により、研究に費やすことができる時間および労力が極端に減少した。そのため、研究計画全体が遅延している。 現在は、診断業務の軽減により、研究に費やすことができる時間および労力を確保できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度に開発した組織マイクロアレイ作製法を活用し、症例集積を進める。
|
Causes of Carryover |
研究計画全体が遅延しているため、当初計画していた分子病理学的研究を行うことができなかった。次年度使用額は、分子病理学的研究に使用したい。
|
Research Products
(3 results)