2021 Fiscal Year Research-status Report
病理標本を基盤とした形態診断と分子診断を統合した新しい乳癌再発予測モデルの開発
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17K10568
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
大迫 智 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 研究員 (70535442)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳癌 / 予後因子 / 病理診断 / 免疫染色 / 組織マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌の術後薬物療法では、各患者のベースライン再発リスク(術後無治療であった場合の再発率)を正確に推定することで、その患者に適した治療選択が可能となる。日常臨床での再発リスク評価には、年齢、腫瘍径、グレード、ホルモン受容体(ER、PgR)、HER2、Ki67などが用いられるが、実地臨床で評価に悩むことも多い。また、既報告のベースライン再発リスク予測モデルは欧米人を対象としたものであり、日本人を含むアジア人を対象とした予測モデルは作成されていない。 そこで、アジア人乳癌患者の治療選択の個別化に貢献するため、日本人乳癌のベースライン再発リスク予測モデルの作成を目的とした研究を行っている。対象は、(財)癌研究会附属病院(現・がん研究会有明病院)で1979~82年に手術が行われ、術後薬物療法が行われなかった日本人乳癌患者935症例である。 多数の病理検体を通常のwhole sectionで薄切・染色すると、膨大な労力・費用が必要であるため、まず本研究に最適化された組織マイクロアレイ(TMA)作製手法の開発を試みた。前年度までに、腫瘍と免疫環境双方のマーカーにおいて、代表切片whole sectionと非常に良好な一致度を示すTMA作製手法を開発した。本年度は、そのTMA作製手法を用いて、対象症例全例のTMA作製が完了した。 TMA作製完了後に、全935例のうち273例(29%)の組織形態診断および免疫染色評価が完了した時点で、中間解析を行った。その結果、原発巣浸潤径(pT分類)、リンパ節転移個数(pN分類)、サブタイプ(ER、PgR、HER2、Ki67による分類)、腫瘍浸潤リンパ球の量により、予後(無遠隔再発生存率)を層別化できることが確認された。来年度に残りの662症例の組織形態診断および免疫染色評価を完了し、統計学的手法を用いて、予測モデルの作成・検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究初年度から3年間、施設内の病理医の退職などによる研究代表者の病理診断業務の増加により、研究に費やすことができる時間および労力が極端に減少した。そのため、研究計画全体が遅延している。 現在は、診断業務の軽減により、研究に費やすことができる時間および労力を確保できている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度に残りの662症例の組織形態診断および免疫染色評価を完了し、統計学的手法を用いて、予測モデルの作成・検証を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画全体が遅延しているため、当初計画していた分子病理学的研究を行うことができなかった。次年度使用額は、分子病理学的研究に使用したい。
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