2017 Fiscal Year Research-status Report
乳癌悪性化を担うTRIMファミリー蛋白質の作用メカニズムと臨床応用
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17K10571
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
東 浩太郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30401110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 聡 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (40251251)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳がん / ホルモン療法耐性 / 治療抵抗性 / TRIM25 / TRIM44 / TRIM47 / NFkappaBシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、TRIM (Tripartite Motif)ファミリー蛋白質を切り口として、新たな乳がん悪性化・治療抵抗性にかかわる分子メカニズムの解明とその応用を目指している。 平成29年度には、本研究で着目しているTRIMファミリー蛋白質であるTRIM47の発現が予後予測のバイオマーカーとなるかどうかを手術検体の免疫染色により検討し、TRIM47の高発現がホルモン療法耐性に関する予後不良因子であることを見出した。エストロゲン受容体陽性乳がん細胞株MCF-7およびMCF-7より樹立したタモキシフェン耐性株を用いた機能解析において、TRIM47の発現を抑制すると細胞増殖が抑制されることを示した。また、TRIM47の発現抑制により、NF-kappaBシグナルが抑制されていることをIkappaBalphaのリン酸化抗体を用いたウエスタンブロッティングおよびレポーターアッセイにて示した。 一方、エストロゲン受容体陽性および陰性乳がん双方の予後不良因子であることを見出していたTRIM44に対し、そのメカニズムの解析を行い、TRIM44の発現抑制により、エストロゲン受容体陽性乳がん細胞株MCF-7およびエストロゲン受容体陰性乳がん細胞株MDA-MB-231の増殖が抑制されることを示した。また、TRIM44の発現抑制により、MDA-MB-231の細胞運動能が低下することも見出した。さらに、そのメカニズムとしてNF-kappaBシグナルの活性化、CDK19遺伝子の抑制, MMP1遺伝子の誘導を示した。これらの結果より、私たちの研究室からの既報であるEfp/TRIM25を含め、TRIM44、TRIM47という3つのTRIMファミリー蛋白質が乳がんの予後悪化因子として作用することを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床検体の解析からTRIM44, TRIM47の発現が、乳がんにおける予後不良因子としであるという裏付けを得ることができ、メカニズム解析や新たな治療法の開発へ研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Efp/TRIM25、TRIM47はその分子構造からE3ユビキチンリガーゼであると考えられ、TRIM44は脱ユビキチン化酵素であると考えられる。TRIM25, TRIM44に関しては、既に私たちおよび他の研究室より基質の報告があるが、未知の基質があると考えており、結合蛋白質の精製を手掛かりにその同定を進める。同定された新規基質の乳がんの病態に及ぼす影響を解析しつつ、乳癌患者由来の検体におけるそれらの蛋白質の発現を調べることにより、予後因子および治療標的となる可能性を検討する。さらに、基質・共役因子を標的とした最適な治療法の検討を行う。最終的にはマウスを利用したプレクリニカルな治療を行い、効果や有害事象を評価し、臨床応用につなげる。
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Causes of Carryover |
TRIM25の結合蛋白質精製のために、初年度に多くの出費を予定していたが、TRIM44、TRIM47の臨床病理的な解析を優先させたため、初年度の使用額は予定よりも少額となった。次年度以降は、結合蛋白質精製を予定しており、消耗品等の出費が予測される。本年度の出費を抑えることができたため、次年度以降に使うことができる金額が増え、このためさらなる研究の加速が期待できる。
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Research Products
(7 results)