2017 Fiscal Year Research-status Report
癌免疫逃避機構における腫瘍血管内皮細胞の抑制性抗原提示細胞機能の解析
Project/Area Number |
17K10573
|
Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kure Medical Center |
Principal Investigator |
尾上 隆司 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (90549809)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 癌免疫 / 微小環境 / 腫瘍血管内皮細胞 / 免疫逃避 / PD-L1 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌微小環境などの特殊環境では免疫抑制能をもつ抑制性抗原提示細胞が誘導され、癌の免疫逃避に関わっていることが最近明らかにされつつある。我々は最近、in vitroにおいて癌とのクロストークを介して腫瘍血管内皮細胞(Tumor Endothelial Cells; TEC)に免疫抑制能が誘導される知見を得た。さらにTECが抗原提示に必要なクラスII分子や免疫チェックポイント分子であるPD-L1を発現することを明らかにした。 本年度はTECの解析モデルとして,C57BL/6マウスに異種タンパクであるOVAを遺伝子導入したB16-OVAメラノーマ腫瘍株を皮下移植した担癌マウスモデルを作成した。本モデルではOVAは癌抗原の模擬蛋白として解析を進めた。腫瘍からTECを採取し、これらの細胞のOVA関連蛋白(SIINFEKL)のクラスI上発現をOVA関連蛋白/クラスI複合体を認識する抗体で染色し、癌抗原提示能を検証した。TECは腫瘍の発現するOVAをエンドサイトーシスし、自身のクラスIにその蛋白を提示することが明らかとなった。さらにOT-I transgenicマウスから分離したOVA特異的CD8+T細胞とOVAパルスした骨髄由来樹状細胞の共培養下に、B16-OVA担癌マウスから分離したTECを用いたsuppression assayを行うことで癌抗原特異的抑制能を検討したところ、TECはOVA特異的にT細胞増殖抑制作用を有することが明らかとなった。さら上記suppression assayにおいて、抗体でのPD-L1ブロッキングにより、TECのもつ特異的T細胞抑制能はキャンセルされた。これらの結果は、TECは自身の表出するPD-L1により、特異的T細胞を抑制していることを示唆する。今後、PD-L1ノックアウトマウスを用いてin vivoでこれらの結果を検証する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は①担癌マウスモデルを用いた腫瘍血管内皮細胞の抗原提示能および抗原特異的免疫抑制能の検証(in vitro)、②腫瘍血管内皮細胞の癌免疫抑制機構の解析(免疫チェックポイント分子など)を目的とした。マウスモデルを用い、in vitroにてこれらの解析を行い、上記の結果を得た。ここまでは概ね計画どおりといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
H30年度は上記結果に基づき、研究計画に沿って、ノックアウトマウスを用いたin vivoでの検証、他の癌細胞ラインを用いた検証、及び、臨床ヒト癌組織での組織学的腫瘍血管内皮細胞フェノタイプ解析及び予後相関の病理・統計学的検討を進める予定である。具体的にはPD-L1ノックアウトマウスをホストとして、上記担癌マウスモデルを作製し、腫瘍の増大の差を検証すると同時に、同様のin vitro assayを行い、TECの癌免疫抑制能におけるPD-L1の寄与を再度検証する。さらにメラノーマ以外の固形がんモデルである大腸癌や肝癌細胞ラインを用いて同様の検証を進める。また臨床腫瘍切除標本におけるCD31 陽性細胞のmicrovessel density (MVD)およびPD-L1発現を免疫染色またはRT-PCR にて定量し、臨床予後と比較検討を行う。現在PD-L1ノックアウトは入手できていないが、海外の協力研究施設より輸送の段階に入っており、年度内には使用可能になると思われる。
|
Causes of Carryover |
PD-L1ノックアウトを譲渡してもらう予定であり、上記金額はその輸送費にあてる見込みであったが、提供元施設でのブリーディングが遅れたため、今年度に輸送できず、次年度使用として繰り越したため。本年度は輸送段階にに入っており、当初の予定通りマウス輸送費として使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)