2017 Fiscal Year Research-status Report
次世代シーケンサーとデジタルPCRを用いた食道癌患者末梢血中ctDNAの検出
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17K10586
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒川 幸典 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10470197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 誠 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (50444518)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 食道外科学 / ctDNA / 次世代シーケンサー / 治療効果予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌患者の血液中に微量に存在する腫瘍由来遊離DNA(ctDNA)は、体内腫瘍量モニタリングの新たな循環血液マーカーとして、また腫瘍の持つ遺伝子変異を診断するための非侵襲的検査法(liquid biopsy)として注目されている。 本研究では次世代シーケンサーやデジタルPCRを用いたctDNAの検出が、腫瘍の早期発見や再発診断あるいは抗癌剤の効果判定、効果予測などに有用であるかどうかを調べるものである。 食道癌に対する術前補助化学療法としてのDCF(Docetaxel+Cisplatin+5FU)療法は、高い奏効率を示す一方で重篤な有害事象も多く、DCF療法の開始前に治療効果を予測することは食道癌治療において重要なことである。本研究は、術前補助化学療法としてDCF療法を行う食道癌患者の末梢血を用いて次世代シーケンサーによるctDNAの解析を行い、DCF療法の治療効果予測につなげることを目的とする。 平成29年度は、当院で診療を行った術前補助化学療法としてDCF療法を行った食道癌患者を対象に組織の収集を行った。5症例において抗癌剤治療開始前および手術前(抗癌剤治療後)、手術後の血液検体、手術時の切除標本の腫瘍組織検体を採取し、ただちに凍結保存した。血液検体は遠心処理により血球成分を完全に除去し、血漿のみを分取した。血漿および腫瘍組織検体のDNAはQIAamp® DNA mini kitを用いて抽出した。DCF療法前後の計10検体の全ての血漿からcfDNAを抽出することに成功し、手技に問題がないことを確認した。抽出したcfDNAの濃度の中央値は4.1 ng/μL (2.6-6.2 ng/μL)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の計画としては、組織の収集とDNAの抽出および原発巣のシーケンスとその結果の解析を予定としていた。現在までに、食道癌の血液検体および腫瘍組織検体の収集は順調に進んでいる。またcfDNAの抽出にも成功し、手技面での問題がないことを確認している。 今回の研究の目的は実臨床での治療効果を予測することであり、実用性を重視する観点からより安価で簡便な方法が求められる。よってctDNAのターゲット遺伝子を食道癌の90%以上の症例に変異を認めるとされているTP53遺伝子に絞り、解析を行うこととした。それにより当初より予定していた原発巣のシーケンスによる変異の同定および解析の過程が省略できた。またTP53遺伝子のDNA結合ドメイン(exon 2-11)領域をシーケンスする予定であるが、プライマーの設計は既にできている状況である。以上より、平成29年度に予定していた計画はほぼ達成されたとみなし、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に収集した食道癌患者の血漿よりcfDNAを抽出し、次世代シーケンサーによりTP53遺伝子のDNA結合ドメインの変異解析を行う。また腫瘍組織検体から抽出したDNAにおいても同様の手法を用いてシーケンスを行い、腫瘍に特異的な変異であることを確認する。さらに、多くの症例に重複する変異部位が認められた場合は専用のプライマーを設計し、デジタルPCRによる解析を行う。これらの解析から得られたTP53の変異の有無や部位、変異形式とDCF治療による治療効果(RECIST、内視鏡的効果、病理組織学的効果など)やその他臨床病理学的因子との関連につき検討を行う予定である。更に、DCF治療前後におけるctDNAの割合の変化と腫瘍径、組織型、臨床病気、その他臨床病理学的因子などとの関連性についても解析する。 これらの解析により得られた結果から臨床応用の可能性が十分に期待できると考えられた場合、関連病院との多施設共同臨床研究グループにおいて、その有用性を検証するための新しい前向き臨床研究を計画する。
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Causes of Carryover |
予定していた物品がより安価に購入ができたため来年度に利用するために繰り越しを行う
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