2018 Fiscal Year Research-status Report
SNPから迫る日本における潰瘍性大腸炎術後回腸;炎の機序
Project/Area Number |
17K10622
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
畑 啓介 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (60526755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清松 知充 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (00625303) [Withdrawn]
川合 一茂 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80571942)
野澤 宏彰 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80529173)
渡邉 聡明 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80210920) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 回腸嚢炎 / 一塩基多型 / 外科 |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎に対する内科治療は5アミノサリチル酸製剤やステロイドのほかに免疫調整剤や抗TNFα抗体などの生物学的製剤も登場し、多岐にわたるようになった。一方で依然として難治や重症で手術が必要な症例もあるのに加え、最近では大腸癌の合併で手術が必要になるケースもあり、潰瘍性大腸炎に対する手術療法は依然として重要な治療オプションとしての位置づけであると考えられる。 潰瘍性大腸炎に対する標準術式として回腸嚢肛門(管)吻合が行われるようになり、永久人工肛門を回避できる症例が多くなったが、回腸嚢に炎症が起こる回腸嚢炎がおこると患者のQOLは低下し、難治例では人工肛門造設が必要になることもある。 そこで潰瘍性大腸炎に対し回腸嚢肛門(管)吻合を施行した症例の一塩基多型(SNP)と回腸嚢炎の関係を調べることとした。潰瘍性大腸炎患者約100例の切除標本を用いて非腫瘍粘膜のFFPE標本からDNAを抽出した。DNAの濃度を測定した後、既報のSNPのallele frequencyやIBDに対するOdds ratioなどを参考にして、海外からの報告で回腸嚢炎との関連が示唆されているTNFSF15やその他の炎症性腸疾患感受性遺伝子に関してマーカーを選択し、SNP typingの条件設定ののち、タイピングを行った。 また、DNA用の10マイクロメーターのFFPE切片を切り出す際に、同時に免疫染色用の薄切もすでに行っており、マーカーが決まり次第免疫染色を行うことが可能である。 来年度は残りのアッセイおよびデータの最終解析を行い英文論文化を目指す。臨床的なデータはデータベース化されており、最終的にはSNPと回腸嚢炎の発生との関連を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に先立ち、東京大学にて倫理委員会に倫理申請を行い、倫理審査を通過したのちに実験を開始した。 潰瘍性大腸炎に対して回腸嚢肛門(管)吻合を行った約100症例の手術標本から非腫瘍性病変のパラフィンブロックを抽出し、10マイクロメーターの切片を作成した。脱パラフィンののち、FFPE用のDNA抽出キットを用いてDNAを抽出した。DNA濃度を測定し、十分な濃度が得られたものをその後の解析に使用した。TaqMan SNP Genotyping Assaysを用いてTNFSF15等の炎症性腸疾患関連一塩基多型のgenotypingを行った。一塩基多型のタイピングはApplied Biosystems 7500FASTリアルタイムPCRシステムを用いて解析を行った。タイピングは大多数の症例で可能であり、SNPタイピングは大多数の症例で終了している。症例の臨床情報はすでにデータベース化されており、来年度以降はその他の一塩基多型マーカーを追加して測定したのちに、一塩基多型と回腸嚢炎の発生との関連に関して統計処理を行う予定である。また、DNA用の10マイクロメーターのFFPE切片を切り出す際に、同時に免疫染色用の薄切もすでに行っており、マーカーが決まり次第免疫染色を行うことが可能である。他の抗体ですでに最適化された免疫染色のプロトコールを用いて、本研究で回腸嚢炎との関連があきらかになった遺伝子マーカーに関しては、既存検体でタンパク解析が有用と考えられた場合には、そのタンパク質の染色動態とSNPとの関連を調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
潰瘍性大腸炎患者の切除標本からすでに抽出したDNAを用いて、TaqMan SNP Genotyping Assaysを用いてTNFSF15以外の炎症性腸疾患関連一塩基多型のgenotypingを行う。一塩基多型はApplied Biosystems 7500FASTリアルタイムPCRシステムを用いて解析を行い、タイピングを行う。既報のSNPのallele frequencyやIBDに対するOdds ratioなどを参考にして、マーカーを選択しアッセイを行い、現在のところ大多数の症例で抽出されたDNAで、SNPタイピングが終了している。 今後はすでにデータベース化された臨床情報と回腸嚢炎やその他のアウトカムとその他のマーカーの関連に関して統計処理を行う。すでにデータベース化された臨床情報と回腸嚢炎やその他のアウトカムとその他のマーカーの関連に関して統計処理を行う。また上述のように、DNA用の10マイクロメーターのFFPE切片を切り出す際に、同時に免疫染色用の薄切もすでに行ってあり、免疫染色のマーカーが決まり次第、免疫染色を行うことが可能である。他の抗体ですでに最適化された免疫染色のプロトコールを用いて、本研究で回腸嚢炎との関連があきらかになった遺伝子マーカーに関して、そのタンパク質の染色動態とSNPとの関連を調べる予定である。予測としては特にプロモーター領域のSNPとそのタンパク質の発現量に関連がある可能性が考えられるため、そのようなマーカーに関しては免疫染色を行う方針である。 本研究が順調に進行した場合には、その結果は英文論文および学会での発表により広くその成果を世の中に還元する予定である。
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