2018 Fiscal Year Research-status Report
内因性レクチンを薬剤キャリアーとする新規がん治療開発
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17K10687
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
榎本 剛史 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10628762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 悪性腫瘍 / ドラッグデリバリー / 糖鎖 / レクチン / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまでの抗原抗体反応に依存した分子標的治療薬に代わる方法として、癌細胞特異的な糖鎖とそれに特異反応するレクチン(糖結合タンパク)の組み合わせを見つけ、レクチンによる効率面、経済面に優れた薬剤送達の実現を目指すものである。平成29年度は、主に標識レクチンを用いた各種癌組織における糖鎖発現解析を行い、それぞれの癌腫に特異的に反応するレクチンの同定を行った。筑波大学付属病院倫理委員会の承認を得て、手術検体を用いた組織アレイの作成を行った。具体的な癌腫としては、食道、胃、大腸、膵臓(膵腺癌、神経内分泌腫瘍、IPMN)、胆管、肝、乳、肺(腺癌、扁平上皮癌)をそれぞれパイロット的に20症例の組織アレイを作成した。使用したレクチンはそれぞれの認識する糖鎖別に4パターン(フコシル化、シアル化、N型糖鎖分岐、O型糖鎖分岐)に分類し、合計14種類のレクチンで行った。標識レクチンを用いた免疫化学染色を行い、癌細胞に特異的に反応するレクチンを数種類同定した。その結果、大腸癌、結腸癌に特異的に反応し、正常大腸上皮に反応しないレクチンAを同定、更に我々が既に発見し論文報告した膵癌細胞に特異的に反応するBC2レクチン(Shimomura O et al., Molecular Cancer Therapeutics 2018)とは別に、新たに膵癌細胞、膵粘液産生腫瘍(IPMN)に高い反応性を示し、正常膵管上皮に反応しないレクチンBの同定にも成功した。これらの知見は今度更に症例数を増やして確認していく予定である。今後共同研究先である産総研創薬基盤チームと合同でレクチン工学の技術を用いて、これらのレクチンと薬剤の融合薬を作成し、In vitro、In vivoで抗がん作用を検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は各種癌における特異反応するレクチンの探索を中心に行った。倫理委員会に承認を得て、免疫組織化学染色を行うための組織アレイを各種癌の手術検体を用いて作成した。これを用いて網羅的なレクチン染色により、大腸癌、膵癌の癌細胞に特異的に反応性を有するレクチンを同定することができた。現在、同定したレクチンを用いて、有効な抗がん作用を有する薬剤とのタンパクもしくは、薬剤と融合させ、薬剤融合型レクチン(Lectin Drug Conjugate;LDC)を作成中である。効率的なレクチン融合薬の作成、精製を調整中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は他の癌腫でのさらなる検討や、レクチンの種類を増やして同様の解析を行い癌―レクチンの組み合わせを増やしていく。その癌―レクチンの組み合わせの中から、最も特異性の高い数種類の組み合わせを同定し、レクチン染色を再検討し、陽性症例の割合、癌細胞集団の中での陽性細胞の割合を検討する。同定されたレクチンが改変可能であるものを選定し、薬剤融合によりレクチン薬剤複合体(LDC)を作成する。さらにそのLDCがIn vitro、In vivoでの抗がん作用、殺細胞効果を検証していく。また最適なレクチン―薬剤の組み合わせについても検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の目的は新規の癌ーレクチンの組み合わせを同定するのみでなく、レクチン薬剤複合体による新しいDrug Delivery法による癌治療を目的としている。次年度では、本年度で候補に挙がった癌ーレクチンの組み合わせを選定し、実際にレクチン薬剤複合体を効率的に作成、精製することを挑戦する。次に、実際に作成したレクチン薬剤複合体を用いてIn vitroでの抗がん作用の実験を予定する。次年度の大部分は、選定されたレクチン薬剤複合体を作成することに注力する予定である。またレクチン薬剤複合体が完成した際は、これまで当研究室で用いてきた各種マウスモデル(細胞株移植モデル、患者腫瘍片移植モデル、同所移植モデル、腹膜播種モデル)を用いた抗がん作用の実験を予定している。
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