2018 Fiscal Year Research-status Report
脂質メディエーター産生酵素の膵癌微小環境形成における役割と臨床的意義
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17K10692
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中島 真人 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60588250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永橋 昌幸 新潟大学, 医歯学総合病院, 研究准教授 (30743918)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
坂田 純 新潟大学, 医歯学系, 講師 (70447605)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スフィンゴシン-1-リン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、前年度から引き続き、がん細胞において多彩な機能を有する脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)を産生するS1P産生酵素(SphK1, SphK2)遺伝子を、CRISPR/Cas9システムにてノックアウト(KO)したPAN02マウス膵癌細胞とその野生株(WT)を用いて、腫瘍微小環境(TME)におけるSphK1とSphK2の機能解析を行った(課題研究A)。さらに膵癌切除検体におけるリン酸化SphK1とS1Pの臨床的意義をhuman sampleで検索するため、臨床検体のリピドミクス解析を行った(課題研究C)。 【課題研究A】昨年度、WST-8を用いた増殖アッセイを用いて、SphK2 KO細胞の増殖能はWT細胞より有意に低く、SphK1 KO細胞の増殖能はWT細胞より高いことを示したが、同様の実験をゲムシタビン存在下で行ったところ、SphK2 KO細胞の増殖能(生存能)はWT細胞より有意に高くなり、SphK1 KO細胞の増殖能(生存能)はWT細胞より低いことが示された。膵癌細胞においてSphK2は腫瘍細胞の増殖に、SphK1は化学療法の耐性に関与する可能性が示唆された。 【課題研究C】膵癌切除検体のリピドミクス解析では、膵癌組織中のS1P濃度と周囲の膵組織のS1P濃度を安定して測定することが可能であった。また、膵癌組織中のS1P濃度は周囲の膵組織のS1P濃度より有意に高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は研究課題AとCについて研究を推進し、計画通りに進行している。以下に進捗状況の詳細を記載する。 【研究課題A】S1P産生酵素KO膵癌細胞を用いて、抗癌剤環境下での膵癌細胞の生存を解析することで、膵癌細胞の増殖・遊走や抗癌剤環境での生存におけるSph1およびSphK2の働きを詳細に解析した。 【研究課題C】膵癌切除検体におけるリピドミクス解析を安定して行うことが可能となり、膵癌組織と周囲の膵組織のS1P濃度やS1Pに関連するスフィンゴリン脂質の詳細な解析を施行した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和1年度は、課題研究A~Cの以下の点について研究を推進する。 【課題研究A】膵癌細胞のS1P産生酵素および産生されるS1PのTME形成シグナルにおける役割(in vivo):これまでにSphK1およびSphK2 KO細胞で観察された、膵癌細胞の増殖や遊走、抗癌剤環境下での変化を裏付ける分子メカニズムを検討するため、リピドミクス解析やメタボローム解析を行い、膵癌細胞の増殖や遊走、抗癌剤耐性におけるS1Pシグナルの分子制御機構を解明する。 【課題研究B】膵癌TME形成における癌細胞と宿主のS1Pシグナルの相互作用(in vivo): 課題研究Aで使用した膵癌細胞をマウスの皮下あるいは肝臓に移植し、腫瘍径の推移や予後を解析する。またTME形成における腫瘍細胞と宿主のS1Pシグナルの相互作用をより詳細に観察するため、SphK1およびSphK2をKOした膵癌細胞とマウスを組み合わせた細胞移植実験を行い、腫瘍径の推移や予後を解析する。 【課題研究C】膵癌切除検体におけるリン酸化SphK1とS1Pの臨床的意義(Human sample):膵癌切除検体の腫瘍組織および周囲膵組織におけるスフィンゴリン脂質濃度と臨床病理学的因子の関連を解明する。
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Causes of Carryover |
試薬などの購入に若干の遅れがみられたため、当該年度から次年度に繰り越しとなった。そのため次年度使用額は、当該年度に購入した試薬などの実験用品の支払いに使用する。
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[Journal Article] Different Roles of Sphingosine Kinase 1 and 2 in Pancreatic Cancer Progression.2018
Author(s)
K Yuza, M Nakajima, M Nagahashi, J Tsuchida, Y Hirose, K Miura, Y Tajima, M Abe, K Sakimura, K Takabe, T Wakai
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Journal Title
J Surg Res
Volume: 232
Pages: 186-194
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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