2017 Fiscal Year Research-status Report
浸潤性膵癌に対するヒアルロン酸産生代謝経路をターゲットにした個別化治療戦略
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17K10714
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
佐藤 典宏 産業医科大学, 医学部, 講師 (20423527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 敬治 産業医科大学, 医学部, 教授 (70269059)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒアルロン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表的なヒアルロン酸関連分子について、その発現および機能的役割を解析し、以下の所見を得た。 1)膵癌におけるヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ, HYAL1, HYAL2, HYAL3)の発現を検討し、このうちHYAL1が高発現していることを見いだした。また硫酸デキストランを用いてヒアルロニダーゼを阻害したところ、膵癌細胞の遊走能が低下した(Kohi et al. Pancreas 2016)。2)ヒアルロン酸の特異的レセプターRHAMMの発現が膵癌で亢進しており、高発現群は予後不良であった(Cheng et al, J Cancer 2016)。3)膵癌細胞に対するヒアルロン酸の役割を解析するために、ヒアルロン酸を膵癌細胞の培養上清中に直接加えたところ、(特に低分子ヒアルロン酸は)細胞の遊走能が増加した。一方でヒアルロン酸の阻害剤を投与すると、膵癌細胞の遊走は阻害された。また膵癌細胞と線維芽細胞を共培養したところ、培養上清中のヒアルロン酸が著明に増加し、同時に膵癌の遊走能が増加した(Cheng et al. Oncotarget 2016)。4)ヒアルロン酸の新規分解酵素として最近発見されたKIAA1199(CEMIP/HYBID)が膵癌で発現が亢進しており、発現が高い患者の予後は不良であった(Koga et al, Pancreatology 2017)。5)膵癌細胞においてKIAA1199の発現は炎症によって誘導され、膵癌細胞の増殖、遊走、浸潤能と関連していた(Kohi et al. Oncotarget 2017)。 以上の所見より、膵癌ではヒアルロン酸の産生、分解、およびレセプターへの結合によるシグナル伝達が亢進しており、この一連のプロセスは膵癌の進展に重要な役割を果たしていることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに実験がすすんでおり、データも順調に得られている。すでに論文も作成し、アクセプトされている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒアルロン酸代謝プロセスの阻害実験:①産生阻害、②分解阻害、③シグナル(レセプター)伝達阻害、発現プロファイリングと治療感受性との関連性の証明、および各プロセスに対する選択的治療(個別化治療)の有効性検討を実施する予定である。 具体的には、膵癌細胞株10株を用い、以下の3つのグループにおける薬剤(または遺伝子ノックダウン)の細胞遊走能、浸潤能、および増殖能に対する治療効果を評価する。1)ヒアルロン酸産生阻害:ヒアルロン酸産生阻害剤4-methylumbelliferone(4-MU)、HAS2, HAS3をsmall interfering RNA(siRNA)を用いてノックアウト。2)ヒアルロン酸分解阻害:ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)阻害剤である硫酸デキストラン、および新たに発見された海洋微生物由来のヒアルロニダーゼ阻害剤(ヒアルロマイシン:富山県立大学(微生物工学講座)五十嵐康弘先生より供与)。3)ヒアルロン酸シグナル伝達阻害:CD44の中和抗体、RHAMMのsiRNAノックアウト作成。 さらに、発現プロファイリングに基づいて分類したフェノタイプと、産生阻害、分解阻害、シグナル阻害治療の感受性との関係を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
計画通りに実験がすすんでおり、データも順調に得られている。一部、試薬の購入が遅れたため年度内に助成金を使用しなかったが、翌年度も計画通り進行を予定している。
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Research Products
(2 results)