2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of DLC Coating Artificial Vascular Graft To Achieve Higher Patency
Project/Area Number |
17K10756
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤井 泰宏 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (40534673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 治仁 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (00550857)
大澤 晋 岡山大学, 大学病院, 講師 (20643414)
中谷 達行 岡山理科大学, 付置研究所, 教授 (50520920)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人工血管 / Diamond-like-carbon / 血管再建 / 動脈 / 静脈 / 開存率向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビーグルを用いて、片側の頸動脈にDLCコーティングePTFE人工血管、反対側頸動脈に通常のePTFE人工血管を用いて動脈置換術を行い、DLCコーティング有無で開存を比較検討した。 DLCコーティング人工血管では薄く均一な新生内膜ができているのに対し、通常の人工血管では内膜が不均一に肥厚しさらに肥厚した内膜に解離が生じていることが観察された。また、人工血管内の開存率はDLCで良好であった。同様のDLCの効果はePTFE人工血管をシャントに使用した場合にも認められた。シャントとしてDLCコーティングePTFEを使用した場合、DLCコーティングありでは動脈吻合部近く、シャント中央部での開存性が良好であった。静脈側吻合部近くでは不均一な新生内膜増生が認められるがその内容は非常な疎なものであり、内腔は開存していた。しかし、DLCなしの通常のePTFE人工血管では、動脈側吻合部近くの内膜増生はDLCと同等だが、人工血管中央部に疎で分厚い新生内膜を認め、静脈側吻合部近くは密に基質化した新生内膜が発育し人工血管内腔を閉塞していた。内シャントでは通常人間にePTFE人工血管を使う場合に、静脈側の吻合部周囲の狭窄が一番問題とされ、その発生頻度はほぼ必発である。静脈側の新生内膜肥厚が強く開存率が低下するという結果は臨床で経験する所見と一致する。また、その新生内膜増生はDLCコーティングで抑制されているものと考えられた。しかし、問題点も明らかになってきた。動脈ー人工血管吻合、静脈ー人工血管吻合ともに、吻合部は高度狭窄もしくは閉塞する場合が多く、この現象にDLCの有無で有意差はなかった。糸に対する反応なのか?吻合操作でDLCが剥がれてしまっているのか将来的には原因検索が必要である。野生動物では人工血管閉塞はヒトより発生しやすく、生存期間を短縮することも検討している。現在各種組織染色施行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はビーグル犬を用いて、動脈置換術を行い、その開存率と組織学的な開存の状態を観察することを目標としていた。当初はDLCコーティングePTFEによる人工血管置換術が6サンプル、DLC非コーティングePTFEによる人工血管置換術が6サンプルが目標であったが、目標は達成された。また、開存の状態がDLCで予想通り良い傾向にあることを組織学的に証明できた。しかしながら、吻合部が高度狭窄・閉塞しやすく、開存した状態のサンプルデータが少なく、追加実験を検討中である。野生動物では人工血管に対する反応が過敏で過剰な新生内膜が発育しやすく、容易に閉塞する。いままでの報告でも生存期間は4週から8週であり、この種の実験でそれ以上の生存期間で行うStudyがほとんどないのは高確率な吻合部高度狭窄・閉塞が原因と思われる。生存期間を4週間、もしくは6週間に短縮した方が、閉塞前のデータが数多く採取でき有意義であると考えられる。また、動脈置換の実験が順調に進行したことから、H30年度以降に予定していた内シャント設置術の実験もいくらか前倒しで試行できた。また組織サンプルの染色も順調にすすんでいる。動脈置換術の追加実験を行う事を考えるとその進捗はほぼ予定通りであると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、当施設ではヤギを扱えるようになった。ヤギはビーグルより頸が長く、頸部の動脈置換術や内シャント設置術が格段に行いやすい。またビーグルより動物のコストが格段に安く、追加実験を行う余裕ができる。今後はビーグルは用いずにヤギで計画の実験を行っていく。また、当初の計画では内シャント設置後8週間で静脈置換術を追加で行いさらに8週生存と考えていたが、吻合部狭窄の発生頻度上、8週間x2の生存期間はまず確実に吻合部閉塞が発生するので現実的でない。まずは4週間生存で内シャント設置術のみの実験を行いそのサンプルがDLCと非DLCで6例ずつそろってから、静脈置換術を含めた2段階の手術手技が可能かどうか検討したい。その方が、次につながる何らかのデータが出やすいものと思われる。また、動脈置換術で得たサンプルは各種免疫染色、蛍光染色を集めたサンプルで試行していく。人工血管置換術後の細胞の誘導状態がDLCと非DLCでどのように異なるのか?データを得ていくつもりである。また、吻合部についてはDLCの手術手技操作による剥離が問題である可能性がある。こちらについては別途予算を獲得して、1度吻合操作後に吻合部の組織を人工血管を含めて採取し、電子顕微鏡で人工血管のDLCコーティング表面の状態を確認する研究を予定している。シャント設置術の比較実験は平成30年度から平成31年度にかけて予定通り施行する予定である。内シャント設置術で得た組織のサンプルも随時染色して組織の違いを確認していく。また当研究チームでは新しい性能を付加したDLCを開発中であり、こちらも別途予算で従来のDLC以上に人工血管に適したDLCが無いか検討する予定である。
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