2021 Fiscal Year Research-status Report
下肢静脈瘤の初期進展におよぼす血管機能破綻メカニズムの解明
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17K10772
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
鳥取部 直子 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (70322576)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 下肢静脈瘤 |
Outline of Annual Research Achievements |
下肢静脈瘤血管のリング状標本における各種薬物(KCl、セロトニン 5-HT、ノルアドレナリン NA および アンジオテンシンII AngII)による張力変化について検討した結果、血管径あたりの収縮力は、各種薬物刺激のいずれにおいても、下肢静脈瘤血管で有意に減弱していた。血管内径別に群分けした下肢静脈瘤血管において、血管内径 6 mm 未満の下肢静脈瘤血管では、各薬物による血管内径あたりの収縮力は、正常血管の収縮力と比較して有意な差は認められなかったが、高度に拡張した下肢静脈瘤血管(血管内径 6 mm超)においては、各薬物刺激による収縮力は、正常血管の収縮力と比較して有意に減弱していた。また、血管内径 6 mm未満の下肢静脈瘤血管(血管内径 3-4.5 mm および 4.5-6 mm)の収縮力の間に有意な差は認められなかった。さらに、下肢静脈瘤血管組織の病理的観察を行った結果、正常血管と同定度の径の下肢静脈瘤血管では、異常が見られなかったものの、高度に拡張した下肢静脈瘤血管(血管内径 6 mm超)では、中膜平滑筋の萎縮や線維化がみられた。これらの結果より、下肢静脈瘤血管において、血管内径の拡大により血管反応性が変化すること、また、一定の大きさまでは、収縮力が保たれていること、すなわち、下肢静脈瘤の進展は、血管平滑筋の収縮力低下とは、直接的に関連しないことが示唆された。下肢静脈瘤の発症においては、組織学的変化に先立って平滑筋収縮力の低下が生じ、これが惹起因子となって血管膨隆が始まる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大にともない、医療機関からのサンプル(下肢静脈瘤血管および正常血管)提供が滞っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画どおり、下肢静脈瘤血管の形態学的変化にともなう各種受容体遺伝子やタンパク質発現レベルの変化、および細胞内シグナルに変化について検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大にともなう医療機関からのサンプル(下肢静脈瘤血管および正常血管)の提供が滞っている。従って、今後は既存の凍結サンプルを 用いて、研究計画に従い実施していく予定である。
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