2019 Fiscal Year Research-status Report
Study for usefulness and safty management of robotic surgery for lung cancer with using CO2 insufflation technique
Project/Area Number |
17K10783
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中村 廣繁 鳥取大学, 医学部, 教授 (30252852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 雄司 鳥取大学, 医学部附属病院, 准教授 (10304239)
三和 健 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (40419495)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肺癌 / ロボット支援手術 / 胸腔鏡手術 / 気胸法 / CO2送気 / 有効性と安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
CO2ガス送気を用いた気胸法がロボット支援下手術を行う際に、操作性の向上と出血量の軽減効果をもたらすかどうかを、胸腔鏡手術モデルを用いて検証した。神戸市にあるMeDIP実習センターにおいて、2019年6月16日(日)、8月10日(土)、10月19日(土)の3回にわたり、SPFブタを使用して実験を行った。方法は胸腔鏡下肺葉切除を気胸法ありと気胸法なしの2群に分けて行なった。胸腔鏡内圧をエアシール送気装置を用いて、5~20mmHgの範囲で5mmHg毎に可変的に設定して、①胸腔内ワーキングスペースの拡大効果(特に縦隔のシフトに縦幅の増加)、②肺動脈出血の軽減効果(肺動脈に18G針で損傷した時の出血量)を解析した。その結果、CO2圧5~10mmHgで、呼吸・循環動態を維持したままで、胸腔のワーキングスペースの拡大効果が得られ、肺動脈損傷時の出血抑制効果も著明に認めた。しかしながら、15mmHg以上では出血抑制効果はさらに著明となったが、酸素飽和度と血圧の低下がみられ、実験した中で1頭はCO2圧が20mmHgでVFを生じ、心停止から死亡した。従って、胸腔へのCO2送気は有用である一方で、呼吸・循環動態への影響も大きく、実際の臨床においてはこの点を十分に注意して使用することが大切と考えられた。本結果は、気胸法の有用性と安全性を示唆するものであり、胸腔内のCO2圧は10mmHgまでが,呼吸・循環系への安全範囲と考えるのが妥当であると結論付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初は、ロボット支援手術において、CO2送気による気胸を作成して、有用性と安全性を解析する予定であった。しかしながら、手術支援ロボットを利用できる施設での実習が困難になり、同じ低侵襲手術であり、設定が同じである胸腔鏡手術による実習を神戸の施設において、3回行った。 実習内容は生後3か月のSPFブタ4頭を用いて,胸腔内のCO2圧を20mmHgまで5mmHg毎に段階的に上げることにより,①ワーキングスペースの拡大効果と②出血抑制効果を検証した。気胸圧に応じてブタの胸腔内の広さは拡大し,20mmHg圧では気胸なしに比較して,高さ(縦幅)が約2倍となった。しかしながら,15mmHg圧以上になると,血圧と酸素飽和度の低下を認め,呼吸・循環系への影響が大きくなった。続いて,気胸による出血抑制効果を検証した。葉間の肺動脈に18ゲージ針で穴をあけると噴出性の出血を認めたが,気胸圧を加えることにより,段階的に出血量は減少した。10mmHgにすると,出血の勢いは著明に減少し,20mmHgではほぼ出血は認められなくなった。しかしながら,気胸圧の増加とともに血圧と酸素飽和度は著明に低下し,20mmHg圧では,4頭のうち,1頭は心室細動(VF)から心停止をきたした。気胸圧は10mmHgまでが,呼吸・循環系への安全範囲と考えるのが妥当と考えられた。 以上は、期待されたいた結果であり、実臨床での経験症例がいまだ豊富でない中で、気胸法を適正に使用して有用活用するために大いに参考になると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
CO2送気による気胸法の有用性と安全性が、ブタの実験を通して検証できた。この実験において、特に適正圧を確認できた意義は大変大きい。しかしながら、本研究ではあくまでブタでの実験であり、人を対象とした実臨床においての適正圧とは限らない。特に、人では一人一人の病状や特性が異なり、呼吸・循環系への影響は個体差が大きいと考えられる。今後は実臨床での経験症例を蓄積して、有効性と安全性、適正圧を検証することが極めて大切である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた学会での発表が延期になり、2020年度に学会発表を行うことなった。従って使用予定であった出張経費等を次年度に繰り越している。
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Research Products
(2 results)