2018 Fiscal Year Research-status Report
分子バーコードを用いた高感度遺伝子変異解析と機能解析
Project/Area Number |
17K10784
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
冨田 秀太 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10372111)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊岡 伸一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30397880)
宗 淳一 岡山大学, 大学病院, 講師 (90559890)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 次世代シークエンサー / 分子バーコード / がんゲノム医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、上皮成長因子受容体(EGFR)変異陽性の肺腺がんを対象に分子バーコード技術を用いたNGS解析を実施し、既存の臨床遺伝子検査との整合性を確認し、共存する遺伝子変異や機能未知遺伝子リストを作成し臨床病理との関連性を解析する。 ①分子バーコードNGSを用いた症例でテクニカルな重複を検証した。分子バーコードNGSでは、解析結果は完全に一致していたが、分子バーコードなしでは、平均重複率は60%程度であり、テクニカルな再現性を検討した結果から、分子バーコードNGSの優位性が明らかになった。 ②分子バーコードNGSにより、擬陽性が疑われる遺伝子変異の検出率の低減効果を確認した。28サンプルの解析結果を比較したところ、分子バーコードNGSでは平均2.4個の遺伝子変異が検出されたが、分子バーコードなしのNGSでは、平均3.3個の遺伝子変異が検出されており、その結果約30%の擬陽性が疑われる遺伝子変異の検出率の低減効果を認めた。 ③臨床遺伝子検査によりEGFR遺伝子変異陽性となった64症例を解析対象として、凍結組織からgDNAを抽出し、がん関連47遺伝子を含むターゲットシーケンスを実施した。分子バーコード技術を用いた次世代シーケンサー(分子バーコードNGS)解析を実施した結果は63/64症例で一致していた。 ④L858R遺伝子変異を有する#3236症例の解析結果から、T790M遺伝子変異が確認された。この結果はダイレクトシーケンスを実施して確認することが出来た。この結果から、#3236症例はL858R遺伝子変異とともに、(EGFR阻害剤を使用する前の遺伝子変異プロファイルとして)T790M遺伝子変異を有する症例であることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子バーコードNGSを用いて上皮成長因子受容体(EGFR)変異における主たる遺伝子変異(L858R, Exon19del, G719X,T790M)と副たる遺伝子変異(L718Q,E709K,R776Hなど)が共存する複合変異(compound mutation)の解析を実施した。64症例中7症例において、E709G/K、D761Y、G598V、R776Hの副たる遺伝子変異を、L858R、Exon19Del、G719Xの主たる遺伝子変異とともに複合変異(compound mutation)として検出した。複合変異(compound mutation)が見つかった7症例の分布を解析したところ、4症例がL858R、3症例がG719Xとの共存として検出された。この結果、統計学的に有意にG719Xで複合変異が検出されることが分かった。 TCGAのPan-Lung cancerデータセットから、660症例の肺腺癌症例を抽出したところ、27症例がL858R、28症例がExon19Del、5症例がG719Xの主たる遺伝子変異を有しており、その内、それぞれ、5症例、2症例、3症例が複合変異を有しており、当方らの結果とともに、G719Xを有する症例で高頻度に複合変異が見つかる事が示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
作成した遺伝子変異リストに基づき、共存する複合遺伝子変異に関して、機能解析を実施する。Ba/F3やBEAS-2Bを用いたin vitro解析系を用いた腫瘍増殖能や薬剤感受性テストを実施する。また、大規模がんゲノム解析結果のデータベースから、遺伝子変異プロファイルと遺伝子発現プロファイルを入手し、遺伝子変異と相関する遺伝子発現データを抽出する。これらの遺伝子変異と相関する遺伝子発現データのGSEA解析等のパスウェイ解析を実施することで、遺伝子変異に由来する機能変化をin silicoでも解析を進める。これらの機能解析の結果を踏まえて、日本人の肺腺がん特異的な機能未知遺伝子変異(VUS)に対するアノテーションを更新する。また、EGFR遺伝子変異陰性となった症例についても解析を実施し、遺伝子変異が無かったのか、遺伝子変異が検出されなかったのか検討し、臨床遺伝子検査の結果について検討する。
|
Causes of Carryover |
細胞培養等の実験に用いる試薬代が予定していたより安価に購入できたことにより、次年度使用額が生じた。次年度使用額は2019年度経費とあわせて、試薬代や実験機器使用料として使用する。
|
Research Products
(5 results)