2018 Fiscal Year Research-status Report
格子ボルツマン法を用いたMRI単独CFD解析法による脳動脈瘤増大因子の同定
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17K10826
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木村 英仁 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (90514753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
甲村 英二 神戸大学, 医学研究科, 教授 (30225388)
林 公祐 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60455152)
細田 弘吉 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (90403261)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | CFD / cerebral aneurysm / prediction / growth / thin walled region / thin wall |
Outline of Annual Research Achievements |
脳ドックのMRI血管撮影(MRA)でたまたま見つかった脳動脈瘤の中でどの動脈瘤が増大して破裂するのか予測不可能であった。近年数値流体力学Computational Fluid Dynamics(CFD)解析によって動脈瘤の増大を予想しようとする試みがあるが、これまでの市販の解析ソフトではMRAデータからの解析が困難で、結果増大前の血流解析ができず、増大に至る血行動態を解明できていなかった。今回我々は本学工学部との医工連携により、MRAのみからCFD解析が可能なソフトを開発した。これによって増大した動脈瘤の増大前のデータを後方視的に解析することが可能となり、実際の増大に至った血行動態上の特徴を指摘できる可能性が考えられた。本研究で増大した患者さん6名の増大前のMRAデータと、5年以上増大していない患者さん6名のMRAデータをCFD解析することに成功し、結果、心拍一周期で拡張早期に一過性の壁面せん断応力の上昇を来していた動脈瘤が、その後に増大しやすいことを突き止めた。本結果を国内、国際学会にて発表し、論文化して米国の脳神経外科雑誌World Neurosurgeryに投稿しacceptされた。これらに並行して市販のCFD解析ソフトhemoscopeを用いて未破裂脳動脈瘤解析をしている際、WSS vector variation(WSSVV)という壁面せん断応力ベクトルの変動とみる指標が、動脈瘤の壁の薄さを予測できる事を新たに発見した。これによって動脈瘤の増大を予測できる可能性もあったため、解析をすすめ、実際に破裂予防の手術を行った12例の動脈瘤を解析し、術中所見で壁の薄かった部分とWSSVVの関係を調査した。結果、WSSVV低値の部分は動脈瘤壁が有意に薄かったことを初めてつきとめ、結果を論文化し米国の脳神経外科雑誌World Neurosurgeryに報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本学工学部と医工連携によって開発した本CFD解析法が実際のパラメーターを反映しているかどうかを検証すべく, 本年度のうちにシリコン樹脂で脳動脈瘤モデルを作成し血管模擬流路内流動実験を行う予定であった。本実験で動脈瘤モデルの壁面せん断応力WSS分布等を計測することで、本ソフトの妥当性が評価でき、解析ツールを確立できる予定である。しかしながら解析過程で、市販の CFDソフトを用いた解析とおおむね類似した結果が得られていることが判明したため、本年度は上述のごとく臨床データの解析を優先した。そのため血管モデル実験の遂行が遅れた。本来の妥当性証明には実際の血管モデルを用いたWSSの計測、そして本ツールによるCFD解析データとの照合、妥当性検討は必要と考えており、アクリル血管での模擬血管作成を業者に依頼し、設計図の検討・修正を繰り返し、ようやく1号機を完成し流動実験を開始したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のごとく今後本学工学部との医工連携により血管モデルを用いた血管模擬流路内流動実験を進め、本CFD解析ソフトの妥当性評価を行っていく。1号機のみで不十分な場合、2号機以降の制作も行い詳細に検討していく。さらに見出した動脈瘤を増大させる因子と思われる「動脈瘤壁における拡張早期のWSSの一過性増大」が他の多数の増大動脈瘤に認められるかさらに多くの動脈瘤の画像データでの解析を行い検証する。症例が集まらない場合は多施設共同研究も考慮して関連病院脳神経外科からの増大動脈瘤を集め解析を行い、 脳動脈瘤を増大させると思われる因子の検証を続け、増大因子を確定する. 解析作業の現在の課題は一例の解析にかかる時間(一晩必要)であり、解析時間の短縮についてもソフトの改良を重ね短縮をはかる。その後, 前向きに本学附属病院脳神経外科外来を受診した未破裂脳動脈瘤患者を対象に本法を用いて動脈瘤の CFD解析を行い, 増大因子の有無をチェックして増大予測を行う。実際に増大した動脈瘤には破裂予防のため開頭脳動脈瘤クリッピング術を施行し, 動脈瘤を切除摘出、摘出標本を病理学的に検証し増大に至った組織学的な裏付けを行う。結果について新たに論文を作成し学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
血管模擬流路内流動実験を行うべくシリコン樹脂製の脳動脈瘤モデルの作成に難渋し時間を要した。患者さんの脳動脈瘤MRI画像データから流体実験用脳動脈瘤モデルの設計を行い、設計図の修正を繰り返し、この度ようやく実験モデルの1号機を作成しえた。現在これを用いて実験を開始している。当初、2号機の作成も年度内に完了予定であったが本年度内に終わらず、次年度に2号機、3号機を続けて制作予定であるため計上した。
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Research Products
(10 results)