2017 Fiscal Year Research-status Report
温度感受性タンパク (TRP) チャネルを用いた脳低温療法機序の分子的解明
Project/Area Number |
17K10830
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
篠山 瑞也 山口大学, 医学部, 特別医学研究員 (70467794)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 局所脳損傷 / 局所脳冷却 / TRPチャネル / 脳低温療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳神経外科領域では,重症頭部外傷に対して頭蓋内圧の上昇を抑え,救命するため全身冷却による脳低温療法を行っている.一方,全身を冷却することで引き起こされる全身合併症が多く,救命できない症例が存在することも事実である.そこで,損傷部位のみを選択的に冷却する局所脳冷却が新しい治療法になりうると想起した.加えて,これまで低体温療法の分子的機序を調べた研究は複数あるが,細胞単位で温度との関連に焦点をあてた検討が極めて少ない.本研究の目的は,温度変化によって細胞内外の変化と温度感受性TRP (transient receptor potential) チャネル活性化との相互変化に着目し,頭部外傷患者に対する脳低体温療法の分子的機序を解明し,局所脳冷却へシフトをすすめることである. 平成29年度は,まず局所脳冷却を可能とするマウス実験系の構築を行った.局所損傷は既存のcontrolled cortical impact (CCI) モデルを用いて作成した.その損傷部位に,ペルチェ素子を基盤とした冷却装置を用いて,損傷脳を局所的に冷却することが可能になった.直腸の深部体温は37度で維持しつつ,局所脳冷却部位を任意の温度で調整できる新規実験系の構築が可能となった.この実験系を用いて,局所脳損傷に対する局所脳冷却をTTC (2,3,5-Triphenyl tetrazolium chloride) 染色で評価した.深部体温を37度で一定にした個体において,脳損傷部位をそれぞれ25度,30度,35度と冷却すると,1週間後の損傷面積は,損傷部位も深部体温と同じ37度に維持した個体と比べ,有意に損傷面積が軽減していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
局所脳冷却の実験系の構築と安定化に時間がかかった. マウスの小さい頭蓋に,CCIデバイスによる局所脳損傷を可能とする開頭を行うと,外気に触れるだけで損傷部位の温度が下がってしまう.そのため,損傷部位の温度を一定に維持するための機器を作製し,その上で局所温度を調整する実験系の構築が難渋し,時間がかかった.
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Strategy for Future Research Activity |
局所脳損傷に対する局所脳冷却の効果がin vivo実験で証明できたため,今後は冷却が影響を及ぼす細胞を特定する.これにはまず免疫染色での評価を行う. その作用する細胞を特定し,パッチクランプによる電気生理学的実験へ進み,脳損傷後の細胞が冷却によりどのような作用を及ぼすのかを検討する. 並行して,TRPノックアウトマウスを用い,同様の実験系を行い,脳損傷と脳冷却に関与するTRPサブタイプを同定していく.
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Causes of Carryover |
本年度の実験内容に変更はなかったが,染色実験や電気生理学実験まで到達できなかったため.448,151円未使用額が生じた.この未使用額については,平成30年度の実験試薬の購入に充てる.
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