2018 Fiscal Year Research-status Report
グリオーマ上皮間葉転換と治療抵抗性の機序解明- 薬剤耐性と幹細胞性維持への関与
Project/Area Number |
17K10860
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
川瀧 智之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20303406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 正夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90345041)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 / グリオーマ / 浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮間葉転換(Epithelial mesenchymal transition;EMT)は、上皮細胞がより運動性の高い間葉系細胞にダイナミックに形質変化する現象で、癌細胞の浸潤や転移への関与が明らかとなっているものの、グリオーマにおいては、詳細な解析がなされていない。そこで、今回は、細胞環境を調節するEMT転写因子のグリオーマにおける関与を検討した。ヒトグリオーマ細胞株 (A172, KG1C, T98G, U251, U87)とマウスグリオーマ細胞株 (GL261)を用い、EMT転写因子ZEB1およびZEB2の発現を定量的PCR及びウエスタンブロット法により検討した。次に、T98G、U251、GL261細胞株を用いてZEB1 and/or ZEB2のsi RNAノックダウン細胞を作成し、transmigration assay (TMA) にて浸潤能をコントロールと比較した。U87 siRNAによるZEB1/ZEB2のダブルノックダウン細胞を作成後、BALB/cAJcl miceの頭蓋内に細胞を移植して、生存期間をカプランマイヤー法でコントロール群と比較した。 ZEB1とZEB2双方のmRNAと蛋白レベルがヒト及びマウスグリオーマのすべての細胞株で高発現していた。TMAでは、ZEB1かZEB2単独のノックダウンでは、10~50 %程度の浸潤抑制能を示すのみであったが、両者のノックダウンにより最大約90%の相乗的な抑制効果が示された (P<0.01)。ヌードマウスにおける頭蓋内移植実験では、コントロール群に比べてZEB1/2ダブルノックダウン細胞群で、生存期間が長い傾向を認めたが、有意差を認めなかった(P=0.2 )。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グリオーマにおける上皮間葉転換転写因子の発現は非常に高く、浸潤能との関連が解明された。今後、化学療法抵抗性についてさらなる知見が必要であるが、概ね予定通り研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
悪性グリオーマにおいて、ZEB1およびZEB2は強発現し、組織学的な悪性度との相関が見られた。両者の発現が相乗的に浸潤能に関与している可能性が示唆された。この転写因子阻害による生体内での抗腫瘍効果については、さらなる解析が必要である。
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Causes of Carryover |
マウスを用いた動物実験が遅れており、支出額が少なくなっていることに起因していると考えられた。ZEB1のノックダウンのみでは有意な腫瘍抑制効果がなかったため、今後は、化学療法や分子標的薬を投与して相乗的な抗腫瘍効果を検討する予定である。
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