2017 Fiscal Year Research-status Report
悪性脳腫瘍におけるRNAメチル化の制御機構とその役割の解明
Project/Area Number |
17K10867
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
上羽 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00314203)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八幡 俊男 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (40380323)
川西 裕 高知大学, 臨床医学部門, 助教 (90527582)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 膠芽腫 / RNA / 核酸の修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAのシトシンメチル化に加え、RNAのシトシンもメチル化を受けることが報告されているが、その生物学的な機能や各疾患における異常に関しては殆ど知られていない。 膠芽腫の一部で検出されるイソクエン酸脱水素酵素(IDH) 1や2の変異は、発がんを促進する代謝産物である2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)を産生し、この疾患の原因の一つである。2-HGは、5-メチルシトシンの水酸化により脱メチル化に導く酵素Ten-eleven translocation (TET)を抑制することでゲノムDNAのCpGを高度にメチル化し、この腫瘍に特徴的なメチル化プロファイルを示す。また、TETはRNAのシトシンも標的としていることが知られている。 これらの事実を踏まえて、膠芽腫やIDHに変異を示す腫瘍がRNAのメチル化に異常を示している可能性について検討した。まず、膠芽腫と乏突起膠腫組織におけるRNAに含まれるシトシンのメチル化レベルについて測定した。RNAメチル化レベルは、正常脳組織や星状細胞に対して一部のIDH野生型の膠芽腫組織とIDH変異型乏突起膠腫で著しく増加していることが検出された。次に、膠芽腫と胚性腫瘍の細胞株において2-HGの細胞膜透過性の類似体である(2R)-Octyl-α-hydroxyglutarateを添加し、RNAメチル化レベルへの影響を検討した。(2R)-Octyl-α-hydroxyglutarateの添加は、RNAのメチル化レベルを上昇させ、膠芽腫細胞の増殖を抑制することが観察された。これらの結果から、膠芽腫や乏突起膠腫ではRNAのメチル化レベルに異常を示していること、RNAメチル化の制御に2-HGやその下流因子であるTETが関与している可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IDH1/2に変異のある脳腫瘍細胞株を樹立出来ていないため、メチル化を受ける網羅的なRNAの解析に着手出来ていない。しかしながら、可能性のある細胞を樹立しつつあると同時に、臨床サンプルを直接、マウスに移植する方法も準備を進めている。RNA全体におけるシトシンメチル化の解析をサンプル数を増やして解析している。膠芽腫幹細胞とその分化細胞におけるRNA修飾の差の解析の準備も整えている。RNAメチル化の機構についても部分的ではあるが解析を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
変異型IDHを発現する膠芽腫細胞や乏突起膠腫細胞を樹立次第、メチル化を受けるRNAの網羅的解析を行い、これらの腫瘍の形質に影響を与えているRNAを同定する。膠芽腫や乏突起膠腫のRNAメチル化異常におけるTET関与の程度を機能的な解析により行う予定である。また、RNAの5-メチルシトシンの水酸化レベルについても検討を加える。活性酸素や酸化ストレスによるRNAメチル化レベルの変動についても検討する予定である。
|
Research Products
(1 results)