2017 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射が脊椎転移の局所進展様式に与える影響 -特に硬膜バリア機構に着目して-
Project/Area Number |
17K10927
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
村上 英樹 金沢大学, 医学系, 准教授 (70334779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射線障害 / 硬膜バリア機構 / 脊椎腫瘍 / 硬膜内浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎腫瘍に対する放射線照射後の手術では、本来は腫瘍に対するバリア組織である硬膜への腫瘍浸潤や硬膜内再発を認めることがある。その原因として、放射線照射による硬膜バリア機構の破綻が推察され、本研究では腫瘍脊髄圧迫モデルマウスを作成し、本仮説を検証した。 10週齢のマウスを用い、20Gyx1回の外照射を行い(照射群)、コントロールには0Gyx1回の外照射を行った(非照射群)。照射後12週の時点で、腹腔内麻酔下に、後方より胸腰椎移行部の椎弓を展開し、エアードリルで背側骨皮質を掘削し、マウス骨肉腫細胞株腫瘍塊を移植した。腫瘍が腹側の脊髄に向かって進展するように、背側をポリグリコール酸シートと軟組織接合用接着剤で被覆した。腫瘍が生着し、脊髄を圧迫して両後肢麻痺となった時点で、標本を作成し病理学的評価を行った。 本手法により両後肢麻痺は、照射群、非照射群ともに7割で達成され、腫瘍移植後から麻痺完成までの期間は両群でそれぞれ平均13日、15日だった。病理学的評価では、照射群で硬膜内への腫瘍浸潤を有する例を認めたが、非照射群で硬膜への腫瘍浸潤を認めた例はなかった。 本研究で用いた手法により比較的早期かつ高確率に腫瘍脊髄圧迫モデルマウスを作成することができた。過去にはラットでの腫瘍脊髄圧迫モデルが報告されているが、マウスにおいて再現性のある同様のモデルを確立することができたことは一つの成果と考える。放射線照射群において、硬膜への腫瘍浸潤を有する例を認め、仮説に矛盾しない病理学的所見が得られた。悪性腫瘍の硬膜内浸潤の発生は局所制御のみならず、生命予後をも著しく不良とするため、本研究で得られた知見が、背椎腫瘍の治療戦略において考慮すべき重要な要素となる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で用いた手法により比較的早期かつ高率に腫瘍脊髄圧迫モデルマウスを作成することができ、モデルの確立は完了した。また病理学的評価では、放射線照射群において、硬膜への腫瘍浸潤を有する例を認めた。放射線照射により硬膜バリア機構が破綻するという、本研究の仮説に矛盾しない現象を確認できており、検体数の不足はあるが、概ね計画通り進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに検体数を増やし、統計学的解析に耐えうる正確なデータを作成する。また、当初の計画通り、癌種においても同様の実験を行い、肉腫との比較を行う。さらに、放射線による硬膜微細構造の変化を観察すべく、電子顕微鏡での硬膜表面・断面の評価も追加する予定である。データを蓄積、解析後、研究成果を国内外の学会で発表していく。
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Causes of Carryover |
平成29年度は効率的な予算の執行と実験計画の若干の遅れのため次年度繰越金が生じた。 今後はさらに検体数を増やすとともに、癌腫での実験にも予算を使用する予定である。また、電子顕微鏡での解析を追加するため、その解析費に使用する予定である。国内外の学会参加費や論文の校正、投稿費にも使用する予定である。
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