2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of self-hardening calcium phosphate cement containing the degradable polymer
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17K10934
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
豊田 宏光 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (50514238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横川 善之 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20358310)
折田 久美 (荻久美) 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (40748597)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キトサン / 骨セメント / リン酸カルシウム / 骨補填材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者人口の増加とともに要支援・要介護認定者は増加の一途をたどり、2010年には500万人、2014年には580万人へと達している。中でも骨粗鬆症性椎体骨折は、高齢者の骨折で最も頻度が高く、要介護、医療費増大の主たる要因となっている。近年本邦にも導入された骨折部に骨補填材料を充填する椎体形成術は、低侵襲で、除痛効果に優れ、早期にADL回復をもたらす点から高齢者医療に福音をもたらした。しかし、骨充填剤として用いられるアクリル性骨セメント(PMMA)には生体親和性が欠如し重合熱が生じる問題や、骨伝導能を有するリン酸カルシウム骨セメント(CPC)には初期強度が不十分であるという問題が存在する。本研究の目的は、医工連携のもと、初期強度、骨親和性ともに優れた新規骨内補填材料を開発し、その有効性を検討することであった。この研究計画では、キトサン含有硬化液CPC及びキトサン非含有硬化液CPCを比較することにより、キトサンを含有する事によるCPCの生体親和性の特性変化を調べた。動物実験リタイアモデルの白色家兎大腿骨の遠位顆部に直径6㎜の骨孔を作成し、2種類の硬化液を用いたCPCを骨孔に留置し、3週、6週で犠牲死させ、X線学的評価、組織学的評価を行ったところ、X線学的にキトサン含有CPCは正常な骨組織を融解させていることが判明した。また組織学的にはキトサン含有CPCではセメント組織の周囲と骨組織の間に軟部組織が介在しており、生体親和性は得られていないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究ではキトサン含有中性硬化液を用いたリン酸カルシウムセメントを使用した実験を行っている。In vitroでは生体吸収性、生体親和性のあるキトサンを硬化液に添加することでセメントがゲル状となり今までにない操作性を獲得し、疑似体液内中では、キトサンが溶け出す事によりCPC内に多孔性を確認する事が確認できた。キトサンを溶解するには酸性環境が必要となる、最も初期の段階ではリンゴ酸を溶媒とし、キトサンを融解した後に実験を行っていたが、酸性状態では骨を溶かしてしまうため中性にする必要が生じた。そこで硬化液にリン酸カリウム、コンドロイチン硫酸を配合することにより、酸性化でキトサンを溶解させた後に中性化する事で酸による骨融解を防ぐ事に成功した。これまでに親和性を高めるために10種類以上の硬化液を作製し、その最適な硬化液の配合の考察をすすめている。疑似体液中のキトサン含有CPCの挙動が白色家兎内の生体内でも同様な挙動をするものと仮定し、リタイア白色家兎の大腿骨でキトサン含有CPCを埋める事による実験を行ったが、単純X線、及びCT、及び組織学的検査では残念ながらキトサン含有CPCはin vitroの実験とは異なり、生体内では多孔質になる状況は得られなかった。多孔質という以前にあらゆる細胞との親和性が得られていないと考えられる。これは予想外の展開であり、キトサン自体の骨親和性が確立できていない事が疑われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではまず、キトサン含有CPCの骨親和性の獲得が最重要課題と考えられる。キトサンはキチン質から抽出精製されるものであるが、キチン質はカニやエビの甲殻や昆虫の外皮,イカ,貝などの軟体動物などの器官,キノコなどの菌類の細胞壁など地球上に広く分布している生体高分子(多糖類)であり、カニ殻から炭酸カルシウム,タンパク質,色素などを除いて作成される。キチン、キトサンは体内で酵素によって分解され、分解産物は生体で代謝される生分解性物質である。つまり、キトサン自体は生体親和性を保持しているはずであるが、本実験系では生体親和性が得られていない。しかもキトサンは地球上から安価に生成されるおおきな利点がある。しかし、キトサンとCPCの組み合わせが不良であるのか、キトサンを融解させる溶媒の物質が生体親和性阻害因子なのかは不明であり、その原因を考える必要がある。現在使用しているCPCはTTCPとDCPDの配合されたものであるが、その組成自体を変える事も有効な手段である可能性がある。また、その他の考えられる成績不良因子として、まずはキトサンそのものが、溶媒に対して融解不良となっている可能性が一つ考えられる。キトサンそのものの溶媒に対する接触面積を増大させる事で溶媒への融解を促進する方法を考える必要がある。また、別の方法として生体分解可能な高分子として、キトサンではなくアルギン酸などの他の生体分解高分子を使用する方法などが有効な方法と考える。
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Causes of Carryover |
現時点で生体親和性のあるキトサン含有CPCは作成できていないため、引き続きキトサン含有CPCの組成や硬化液の成分を調整する事が必要なため。次年度使用できる額は引き続きの動物実験のための動物購入資金や、キトサン含有CPCを作製するための資金とする予定である。
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Research Products
(1 results)