2018 Fiscal Year Research-status Report
制御可能なiPS細胞注射による低侵襲脊椎固定術の開発
Project/Area Number |
17K10935
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
鈴木 亨暢 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (00445016)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺井 秀富 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20382046)
中村 博亮 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (60227931)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | iPS細胞 / ヒト人工多能性幹細胞 / BMP遺伝子 / 骨形成タンパク / HSV-TK遺伝子 / 単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ / 低侵襲脊椎固定術 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は、骨形成タンパク-2 (Bone Morphogenetic Protein-2; BMP-2)、及び、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)発現プラスミドベクターを導入したiPS細胞を作製し、同細胞の骨形成能、及び、ガンシクロビルの添加により発現ベクター導入細胞の細胞死を確認した後に、ラットを用いて細胞注射による脊椎固定術の検証を行うことを主目的とする研究である。 ベクターデザインはBMP-2遺伝子とHSV-TK遺伝子をIRESでつなぐデザインとし、GFP遺伝子を持つベクターにクローニングしプラスミドベクターを作製した。実験手法を確立するため、まずはマウス横紋筋由来細胞株であるC2C12を用いて実験を行う方針とした。プラスミドベクターを用いた実験では、GCV共培養による細胞死を確認でき、HSV-TK遺伝子の発現は良好であった。しかし、ELISAやALP活性ではBMP-2の産生量が不十分であることが判明した。BMP-2の産生量を高めるためには遺伝子導入効率を上げる必要があると判断し、ウイルスベクターを用いる方針へと変更した。ベクターデザインは踏襲したままレンチウイルスベクターへの載せ替えを行った。しかし、ウイルスベクターを用いた実験でも、GCV共培養による細胞死は確認できたものの、ALP活性の上昇はなく、ウェスタンブロッティングでもBMP-2の発現は確認できなかった。BMP-2遺伝子の発現に問題があると考えベクターの配列を再確認したところ、BMP-2の配列に一部修正が必要な箇所が見つかった。現在BMP-2の配列を修正し、新たなベクターを作製しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ベクターデザインはBMP-2遺伝子とHSV-TK遺伝子をIRESでつなぐデザインとし、GFP遺伝子を持つベクターにクローニングしプラスミドベクターを作製した。作製したプラスミドベクターをC2C12細胞にLipofection法にてトランスフェクションした後に、BMP-2機能評価としてALP活性評価、HSV-TK評価としてガンシクロビル(GCV)との共培養による細胞数評価を行った。導入効率は80%前後と高水準でありGCV共培養による細胞死も確認された。しかし、ALP活性評価では実験により増加の幅に差があり再現性が低く、安定して骨芽細胞への分化ができていなかった。そこで、ELISA法にてBMP-2の定量評価を行ったところ、BMP-2の産生量が不十分であることが判明した。この問題を解決するためには遺伝子導入効率を上げる必要があると判断し、ウイルスベクターを用いる方針へと変更した。ベクターデザインは踏襲したまま、レンチウイルスベクターへの載せ替えを行った。作製したウイルスベクターをC2C12細胞にトランスフェクションし、BMP-2、HSV-TKの評価を行った。GCV共培養ではトランスフェクションした細胞の細胞死を確認でき、HSV-TK遺伝子の発現およびその活性は確認された。しかし、ALP活性の上昇はなく、ウェスタンブロッティンでもBMP-2の発現が確認できなかった。そのため、ベクターの遺伝子配列を再確認したところ、BMP-2の配列に一部修正が必要な箇所があることが判明した。現在BMP-2の配列を修正し、新たなベクターを作製中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在BMP-2の配列を修正し、新たなプラスミドベクターを作製中である。ベクターの完成後は、リポフェクション方でC2C12細胞に導入し、BMP-2の産生が認められるかをWestern blotにて検証し、骨芽細胞への分化はALP活性にて評価する。また、GCVとの共培養にて細胞死を確認する。BMP-2の産生量に問題がある場合は、ウイルスベクターへの載せ替えを検討する。In vitroでの実験にてBMP-2の良好な発現と骨形成活性が確認されれば、in vivoでの評価としてC2C12細胞に作製したベクターを導入し無胸腺ラットの横突起間に細胞を注射し、4週間、8週間の時点で犠牲死させ単純X線にて骨新生の状態を確認する。さらに注射部分の脊椎を摘出しmicro CTを用いて新生骨の骨質評価を行う。その後組織標本を作製し、組織学的に新生骨を確認した上で注入細胞生存の有無や骨新生への寄与の割合などを検討し、白兎の棘突起間に注射を行い、骨形成促進作用と骨癒合の評価、及び、GCV投与による骨形成促進作用の中断をμCTにて評価する。また、in vivoの実験に平行して遺伝子導入に適したiPS細胞の状態を探索する。iPS細胞から胚様体を作製しレチノイン酸の存在下で培養することにより、間葉系細胞へ分化を方向付けた後に、骨芽細胞分化培地で培養する予定であるが、どの時点での遺伝子導入を行うことが最も効率的に骨新生を生じるかを検討する。
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Causes of Carryover |
作成したプラスミドベクター及びウイルスベクターの配列異常が見つかったため、現在ベクターを再作成中(作成は企業に委託)である。したがって予定していた実験が中断され、請求金額と使用金額に余剰が生じた。間もなく、ベクターが完成する予定であり、実験を再開できる。具体的にはこの余剰金をまずはプラスミドベクターを培養細胞にトランスフェクションし、そのタンパク(BMP-2、HSV-TK)発現と活性の確認に使用する計画としている。
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