2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K10960
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
川島 寛之 新潟大学, 医歯学系, 講師 (30361900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有泉 高志 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50571915)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨腫瘍 / 軟部腫瘍 / 破骨細胞 / RANKL / デノスマブ |
Outline of Annual Research Achievements |
骨腫瘍における骨破壊の発生機序として、腫瘍組織で産生されるRANKL (receptor activator of nuclear factor-κB ligand: RANKリガンド) が非常に重要な役割を果たしていることが報告されている。すなわち、RANKLは破骨細胞の形成、機能、および生存を司る必須の因子であり、破骨細胞および破骨細胞前駆細胞に発現するRANKL受容体 (RANK) に結合し、破骨細胞による骨吸収を促進することで骨破壊を誘導するとされている。2017年度は、原発性および転移性骨腫瘍に対して抗RANKL抗体であるデノスマブを投与した症例について、臨床的な有効性について検討し、すでに報告した。一方で骨・軟部腫瘍の組織学的な解析を進めていく過程において、一部の軟部腫瘍においても骨腫瘍同様に破骨細胞様の多核巨細胞を伴う腫瘍があることを見出した。軟部腫瘍においても周囲の骨破壊を伴って進展するものがあることから、軟部腫瘍においてもこれら破骨細胞様の多核巨細胞がRANKLを介して骨破壊を生じている可能性があるのではないかと考えた。そこで、2018年度は軟部腫瘍におけるRANKLとその関連分子の発現についても蛋白レベルとRNAレベルで検討した。すると腱鞘巨細胞腫や色素性絨毛結節性滑膜炎、平滑筋肉腫、未分化多形肉腫などの一部の軟部腫瘍においてもRANKL関連分子の発現が高いことを見出した。さらに平滑筋肉腫の骨病変を伴う臨床例において、抗RANKL抗体デノスマブを投与したところ、著明な骨硬化が確認でき、デノスマブによる効果であることが推測された。以上の研究結果は、一部はすでに学会、論文で報告し、追加で現在も発表の準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は軟部腫瘍についてRANKL関連分子の発現に関する解析を進めることができた。当初の計画では骨腫瘍を主な対象として解析を進める予定であったが、骨腫瘍におけるRANKLとその関連分子の発現解析を進める中で、軟部腫瘍についても並行して解析を行うことができた。よって、これら発現解析に関しては、予定以上に早いペースで多くの検体を解析できていると言える。これまでに400例以上の凍結保存した軟部腫瘍組織の臨床検体を用いてRANKLとその関連分子である、RANK, osteoprotegerinの発現を定量的RT-PCRすでに調べた。さらにこのうちの60例ほどについては、パラフィン包埋標本を用いて、RANKLの免疫組織染色を行い、タンパクレベルでの発現も検討した。以上により、臨床検体を用いた解析は予定以上に進めることができていると考えられるが、一方で骨腫瘍における骨破壊発生機序に関する分子メカニズムについては、いまだ新しい知見を得られるまでに至っていない。これは予定していた培養細胞を用いた実験系が、予定通りに確立できていないためである。よって、骨破壊発生機序の解明については、予定より遅れていると言える。2019年度はRANKL高発現の腫瘍における骨破壊発生機序の解析について、さらに力を入れて検討を進めていく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な腫瘍組織におけるRANKL関連分子の発現解析はほぼ終了しており、現在論文投稿中であるため、2019年度中の掲載を目指す。予定通りに進んでいない骨破壊機序の解明に関する研究ついてはより強力かつ迅速に研究を推し進めていく必要がある。培養細胞を用いた研究でRANKL/RANKの破骨細胞への作用にJAK-STAT3シグナルの関連が示唆される研究結果が出ているため、臨床検体でもこれらの分子がどのように関連しているかを検討していく。腫瘍の凍結保存検体によるRANKL/RANKの発現とAKT, MAPK, STATなど細胞内シグナル伝達分子の発現とそのリン酸化の有無の解析については、抗体はすでに現有しており、ウェスタンブロット法の手技も確立しているため、大学院生や実験助手と共に検討を進める。Tissue Microarrayを用いたALPやSOX-9, TRAPなど骨形成、骨吸収に関連する蛋白の染色に関しても、実験手技は確立しており、より時間をつぎ込んで研究を進めていく。これらの検討により、腫瘍組織内においてどのような性質を有する細胞がRANKL関連タンパクを発現しているのか同定を進める。一方で、原発性骨腫瘍におけるオートクラインなRANKL発現の有無についてはまだ未検討であり、RANKL発現の高かった組織型から樹立された細胞株を用いることで、検討を進める。骨腫瘍細胞と骨髄細胞や破骨細胞との共培養によるRANKL発現の誘導の有無についても検討を進める。骨髄細胞や破骨細胞は株化細胞がなく、市販されている初代培養細胞キットを用いて進める方針で、準備段階の培養を開始している。
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Causes of Carryover |
研究が予定通りに進んでいない部分があり、培養細胞や試薬の購入が進んでいないことと、現在論文が投稿途中であり、アクセプトされた際にオープンアクセスを申請する予定であるが、このための費用を温存したため。
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Research Products
(2 results)