2020 Fiscal Year Research-status Report
障害骨組織における再生遺伝子Regの発現動態の解析および骨再生促進法の開発
Project/Area Number |
17K10980
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
藤間 保晶 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60448777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴木 寛弥 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40336863)
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Reg遺伝子 / 骨再生 / 骨膜 / 骨切り術 / 骨折 / 骨癒合 / 手術治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨組織に対する再生遺伝子Reg発現について、これまでの我々の研究から、Reg遺伝子は組織の損傷後、炎症の急性期に発現するという仮説を立て、in vivo検証モデルとしてラット大腿骨骨折モデルを作成して研究した。結果、Reg mRNA遺伝子は骨折修復プロセスにおいて発現し、局在は骨膜組織に著明にあることが見出された。発現は骨折の修復プロセスに同期し、修復が完了すると発現は無くなった。本メカニズムの作用点を骨膜由来間葉系細胞を使用したシャーレ上でのin vitro検証モデルで、細胞増殖、細胞分化の観点から分子生物学的に検討した。種々の分析から、修復に関係する細胞の増殖にはapoptosisの抑制に作用するBim遺伝子との関連が見出された。 一方、新型コロナウイルス感染症の蔓延化、基礎研究および学外交流が抑制されたことから、本研究を自施設で施行する手術、臨床技術の開発に結び付けた。現在、高齢化社会が深刻化する一方、健康年齢の重要性が指摘されている。健康の維持は高齢者の日常生活レベルを向上するのみならず、社会活動および経済活動への進出も可能にする。臨床医でもある我々は高齢者の日常生活の活動度に大きく影響を与える変形性膝関節症の治療に着目した。既存の広く行われている人工膝関節手術は活動度を下げてしまい、高齢者の勤労やスポーツ活動には厳しい治療法であり、我々は日常生活の活動性の維持および関節機能を温存する骨切り手術を開発している。その骨切り手術は「骨折」の治療の応用でもあり、前述の骨組織の修復過程の基礎研究に直結する。現在、我々が過去に研究してきた培養細胞搭載技術(人工足関節、殺細胞処理骨での科研報告あり)および人工骨を用いた治療法を含め、全国の骨切り手術を施行する医師とweb情報交換し、関節温存手術法を検討・検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Reg遺伝子の発現およびメカニズムについて、今春、基礎研究での成果を日本再生医療学会で報告を行った。また、基礎医学と臨床医学の融合を目指すべく、障害骨モデルとして運動器、いわゆる骨修復・骨再生さらには人工骨の効率的使用が求められる関節温存骨切り術をターゲットに検討を進めた。一昨年、人工骨のosteogenesis、効率的使用について論文化し、国際誌に公表した。現在、関節温存骨切り術を施行した患者の臨床経過から本手術の利点、欠点を見出し、欠点を補うべく、本手術に力を注ぐ全国の臨床医とも情報交換を行っている。令和2年4月以降、現在に至るまで新型コロナウイルス感染症の影響により、基礎研究および情報交換等が制限されている状況であるが、この研究を礎に骨修復を鑑みた手術法の検討を進め、臨床手術法の開発については学会や書物での公表を準備しており、新型コロナウイルス感染症対策で研究が種々制限されることを鑑みると、おおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢化社会が深刻化するなか、健康年齢の重要性が指摘されている。健康の維持は高齢者の高い社会活動性および労働活動も可能にする。臨床医でもある我々は高齢者の日常生活活動度に大きく影響を与える変形性膝関節症の治療に着目した。現在広く行われている人工膝関節手術は高い活動性を維持するには困難であり、勤労やスポーツ活動には不向きな治療法である。そこで、我々は世界に先駆けて高い活動性の維持および関節機能を温存する効率の良い関節温存骨切り手術の手術方法を研究・開発している。本手術は骨切りにより下肢アライメントを矯正する手術であり、手技の本質は「骨折」と共通であることから、本研究テーマである骨再生促進術に直結する臨床技術である。今後、本研究のテーマである「障害骨の骨修復・再生の研究」やこれまで我々が研究・報告をしてきた「幹細胞制御技術の研究」を臨床医療に関連付け、新たな手術方法の開発をしていく。 現在、新型コロナ感染症が蔓延し、基礎研究や学会・他施設交流が大きく制限されるなか、我々の施設のみならず関節温存手術を実施している全国の手術執刀者と各種骨切り手術の術式の利点および欠点を検証するネットワークを構築、臨床成績をデータを集積し手技の開発を行っている。 本年は新型コロナウイルス感染症が蔓延する状況下、自施設での臨床研究とネットワークを駆使したデータ解析に中心を置き、患者に安全な、そして安定した治療成績が獲得できる手術術式の開発を目指す。今年度は既に一部、それらの検討から得た研究内容を公表する学会報告、書物刊行が予定されている。
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Causes of Carryover |
本テーマである障害骨の骨修復・再生プロセスの基礎研究から、骨折という現象を用いた新時代にマッチした運動器の組織再建手術治療法の開発について、学会発表を行い、そこで得た知見をもとに論文作成を試みようとしたが、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、学会および他施設との研究交流が消失および中断したため、使用額の差額が生じた。 本年度も新型コロナウイルス感染症対策が継続されるなか、オンラインでの情報交換、会議体制が構築されてきたため、オンライン学会、研究会、会議を用いたデータ収集を積極的に行い、本研究課題を基礎にした臨床技術への応用を検討したい。
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