2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックス(ECM)シートを用いた難治性偽関節の低侵襲治療法の開発
Project/Area Number |
17K10981
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
面川 庄平 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70597103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
赤羽 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40326327)
河村 健二 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (20445076)
清水 隆昌 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70464667)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞シート / 細胞外マトリックスシート / 液体窒素 / 偽関節 / 成長因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞外マトリックス(ECM)シートを用いて、難治性偽関節の治療が可能か否かを実験的に検証することである。 第一段階として、ECMシートの細胞の生存率は0.2%であること、 ECMシートにはⅠ型コラーゲンが破壊されずに含有されること、ECMシートに骨誘導能を有することを検証した。 第二段階として、液体窒素処理後にシート内のタンパク質が残存することを証明した(BMP-2:99%、bFGF:75%、VEGF:67%)。さらに、ラットの偽関節モデルを作成し、ECMシート同系移植後の骨癒合評価を行った。シートを移植しない偽関節群は0%、ECMシート同系移植群は86%で骨癒合した。力学的評価では平均最大強度は偽関節群: 10.3±9.6 N 、ECMシート移植群45.2±24 Nで、ECMシート同系移植群が偽関節群と比較して有意に高値を示した。 今回第三段階として、以下を検証した。12週齢ACIラット9匹を使用し同系移植群と同様の手技で偽関節モデルを作成、ECMシート2枚を偽関節部に全周性に巻くように移植した。シートを移植しない偽関節群とECMシート同種移植群の2群で単純X線、組織像(V.Goldner染色)、力学試験を持って比較した。結果として、最終観察時(移植後8週)では偽関節モデルでは0%、ECMS同種移植群は57%の骨癒合率を認めた。同種移植群の骨癒合率は同系移植群より劣った。組織像では、同種移植群においてシート内石灰化が移植後5週で確認された。8週で骨性架橋を認めるも、リモデリングは認めなかった。力学試験ではECMシート同種移植群の平均最大強度が58Nであった。同系移植群と比較して平均値は高いものの、偽関節群と比較して有意差を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット由来のECMシートのラット大腿骨偽関節部への同系、同種移植を行いその評価が終了した。同種移植では同系移植と比較して骨癒合率が低下し、ECMシートに由来する免疫拒絶反応の可能性が示唆された。まずはECMシートの死細胞の脱細胞化を行うことが目下の課題である。従って人細胞により作成したシートの生成に至っていない。
理由 同系移植による免疫拒絶が全くない環境と比較して、同種移植において骨癒合率に差があり、組織像においても石灰化骨の骨性架橋の像の違いを認めた。同種移植においては拒絶反応が発生していることが一つの要因と判断した。ラット同種移植において骨癒合率は6割程度であり、まずはECMシートの基質改善が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
ECMシート同種移植における拒絶反応を評価する必要がある。ECMシートには死細胞の残骸が存在している可能性があり、それに対する免疫反応として炎症性の細胞の集積をHE染色で評価する。同種移植が同系移植と比較して明らかに炎症性細胞の集積が多い場合には、ECMシートに含有する死細部の除去が必要である。今回は液体窒素処理後、凍結したシートを解凍する程度にしかPBS(リン酸緩衝生理食塩水)でリンスしていない。長時間のリンスを行うか、化学療法により死細胞を除去する必要がある。薬品を使用する場合、ECMシートに残存した成長因子やタンパク質を少なからず損傷させる可能性があるので、使用手技についても検討が必要である。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に推移したが、学会発表および論文投稿が遅延している。また、研究結果が一部仮説とは異なっており、追加研究の遂行が必要である。
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