2018 Fiscal Year Research-status Report
メカニカルストレスセンサーTRPV2による関節軟骨細胞の制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K10997
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 航平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (40794227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30456107)
武冨 修治 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70570018)
張 成虎 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (80780551)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メカノトランスデューサー / 変形性関節症 / 軟骨分化 / Lubricin / Fluid Flow Shear Stress |
Outline of Annual Research Achievements |
軟骨細胞におけるTrpv2の作用を検証するため、生後12週の野生型マウスを用いてdestabilization of the medial meniscus(DMM)マウスを作成し評価した.Trpv2は正常関節軟骨では表層に強く発現していたが,OA進行とともに発現は減弱した.成長後に軟骨細胞においてTrpv2をノックアウトするため Col2a1-CreERT2;Trpv2fl/fl(cKO)マウスを作出し生後12週でDMM手術を施行,術後16週で組織切片の解析を行った.OARSI スコアにて変形性関節症(OA)の進行を定量評価した結果cKO マウスではOA の進行が有意に促進しており表層の破綻が目立ったほか異所性の軟骨増生が顕著であった.in vitroにおいて,cKOマウスの初代軟骨細胞を用いた解析では Trpv2のノックアウトによってアリザリンレッド,ALPの染色性が増加するなど軟骨細胞の分化が促進した.またcKO細胞では関節軟骨の表層の潤滑性を担う基質であるLubricinの発現が減少し,逆にアデノウイルスを用いたTrpv2の過剰発現や,Trpv2 agonist O1821の投与によってLubricinの発現は増加した.中でもLubricinの誘導に深く関わる転写因子CREBのリン酸化がO1821の濃度に依存して亢進していた.さらにLubricinはFluid Flow Shear Stress 刺激によって発現が増加するが,cKO細胞ではその発現増加が有意に減弱した. 以上より、Trpv2は関節軟骨表層に発現しLubricinの誘導を介して関節軟骨を保護することが示され,また軟骨分化を抑制することで表層の異所性軟骨の増生を抑制する可能性も示唆された.Trpv2はシェアストレスによるLubricinの誘導を仲介するメカノトランスデューサーである可能性も考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で述べた関節軟骨の変性過程におけるTRPV2 の発現と下流シグナル活性の評価については、おおむね計画通りに進んでおり、前述のとおりマウス膝関節におけるTRPV2の発現解析、またマウス関節軟骨変性におけるTRPV2の発現の推移についても知見が得られている。 さらに、メカノトランスダクションにおけるTrpv2の働きについては、Shear stressにおけるLubricinの発現および発現の変容に大きく関与することを突き止めた。 今後は培養軟骨細胞を用いたTRPV2のin vitro機能解析において、Trpv2のイオンチャネル活性、すわなち細胞内Caシグナル変動が、どのようなシグナル経路に影響を与えた結果、これまで同定した表現型を呈するに至るかを解析していく予定である。 総じて、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
関節におけるTRPV2のメカノセンシングを介した機能を解析すべく、Fluid Flow Shear Stress 刺激に加えて過剰な伸展刺激負荷やLPS投与などのストレス下におけるTRPV2の発現について解析を進めていく。またTRPV2特異的agonist、TRPV2の発現ベクターを用いたTRPV2のgain-of-functionの解析を行っていく。得られた結果からTRPV2の上流・下流のシグナルを探っていきTRPV2 を取り巻くシグナル群を網羅的に解析する。具体的には、マイクロアレイにより発現の変容を網羅的に解析し下流のシグナル経路を見出す。またChip-seqにより上流のエピゲノム解析を行っていく。 さらに、関節表層、滑膜組織においてTRPV2が発現しているという結果を受けて、滑膜組織でのTrpv2機能解析を行うべく、Trpv2-floxとPrg4-CreERT2マウスとの交配を進めすでに解析を始めている。さらにdevelopingにおけるTRPV2の機能解析を行うべく、Trpv2-floxマウスとconventionalなCol2a1-Creマウス、およびPrx1-Creマウスとの交配を進めそれぞれの段階でのTRPV2の機能について検証予定である。 TRPV2にはいくつかの有用な阻害薬・agonistが同定されており、得られた知見を併せて安全かつ有効な治療標的を探索する。
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Causes of Carryover |
(理由) 順調に研究が進んでいるため、必要以上に経費をかけずに済んだ (使用計画) Trpv2の下流シグナル経路についてはCaシグナル関連として、CaMKⅡ、Ⅳ経路、PKA/CREB経路、またWNT/βCatenin経路がこれまでの予備研究から判明してきており、TRPV2活性の変動に伴うそれらのシグナルの変容を探るべく、タンパクレベルでの解析が必要となるが、各消耗品として試薬、特にウェスタンブロッティング用の抗体の購入費用などに使用する予定である。
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