2020 Fiscal Year Research-status Report
病態心における吸入麻酔薬の心筋保護作用の分子基盤と新規心筋保護法への発展
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17K11050
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
小嶋 亜希子 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (50447877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 裕利 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50252391)
松浦 博 滋賀医科大学, 医学部, 理事 (60238962)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 麻酔学 / 心筋保護効果 / イオンチャネル / 吸入麻酔薬 / Ca2+制御タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
虚血心筋の再灌流時に発生する心筋再灌流傷害は、細胞内Ca2+過負荷を主な発生機転とする細胞傷害である。我々はこれまでに、正常心室筋細胞における、心筋再灌流傷害の実験的な細胞傷害モデルである、①オキシゲンパラドックス(過酸化水素(H2O2)による細胞傷害)、②Ca2+パラドックス(Ca2+ストアの枯渇を誘因とするCa2+流入(store-operated ca2+ entry, SOCE)による細胞傷害)の細胞傷害メカニズムについて検討してきた。 その結果、これら細胞傷害の発生には、種々のCa2+制御タンパク質の機能異常が関わっていることが明らかとなった。これらのCa2+制御タンパク質には、L型Ca2+チャネル、筋小胞体リアノジン受容体(RyR2)、Ca2+/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)、transient receptor potential canonical(TRPC)チャネルなどが含まれる。正常マウス単離心臓では、TRPCチャネルの薬理学的阻害により、虚血再灌流傷害による左心機能の低下が軽減されることも明らかとなった。吸入麻酔薬であるセボフルランも、TRPCチャネルを含むこれらCa2+制御タンパク質の抑制作用により、心筋細胞傷害を軽減させることが明らかとなった。 さらに、肥大心などでの病態心では、これらのCa2+制御タンパク質の機能異常を伴っていることが報告されている。セボフルランは肥大心においても、機能異常をきたしたCa2+制御タンパク質の抑制により、正常心と同様に虚血再灌流傷害から心臓を保護する可能性がある。 また、正常心臓においては、短時間の低酸素灌流後の内因性のATP放出により、左室収縮能の一過性の上昇が発生することを、ランゲンドルフ灌流実験により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥大心モデルマウスの作製は、順調に行えている。 肥大心から単離した左心室細胞を用いてオキシゲンパラドックス、Ca2+パラドックスの発生について検討を行い、正常マウスの単離心室筋細胞と比較して、その発生率が高いことが判明し、発生メカニズムについても検討を行っている。また、吸入麻酔薬セボフルランが、肥大心筋細胞における細胞傷害に対しても保護効果を発揮できるかについても検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
肥大心から単離した左心室筋細胞において、Ca2+制御タンパク質の機能異常について、ウェスタンブロッティング法や免疫細胞化学法、パッチクランプ法などにより検討を行う。 また、肥大心モデルマウスから摘出した心臓を用いて、虚血再灌流実験を行い、左心室内バルーンカテーテルを用いて左心機能を測定する。TRPCチャネルやCaMKIIなどの薬理学的阻害により、肥大心でも正常心と同様に、虚血再灌流による心機能低下が改善するかについて、検討を行う。
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Causes of Carryover |
すでに教室にある薬剤や物品を使用した実験が多く、また前年度からの繰越金額も含めたところ、次年度に使用できる金額が生じた。次年度は当該年度の残金にて、新しく器具や実験動物、薬品、機材等を購入し実験を行う予定である。
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