2019 Fiscal Year Research-status Report
虚血後治療としての吸入麻酔薬が永久中大脳動脈閉塞ラットの神経学的予後に与える影響
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17K11051
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
谷西 秀紀 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40509428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 求 岡山大学, 大学病院, 講師 (00457219)
佐々木 俊弘 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40509436) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イソフルラン / 神経学的予後 / Postconditioning / 中大脳動脈閉塞 / 検者間信頼性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度までの研究で永久中大脳動脈閉塞モデルではイソフルランは神経学的予後に影響を与えないという結果をえたことを受け、2019年度は一歩立ち戻って一時的中大脳動脈閉塞モデル(90分の虚血負荷)における虚血開始後イソフルラン投与が虚血1週後の神経学的評価に影響を与えるか評価を行った。虚血開始後15分後からと、2時間後(再灌流後30分後)からイソフルラン投与を開始したが、いずれも虚血1週後の神経学的予後を改善させるには至らなかった。以上より、ラット中大脳動脈閉塞モデルにおいて臨床に近い条件に置いた場合は、一時的虚血・永久虚血にかかわらず虚血開始後に投与したイソフルランは虚血1週後において(短期予後)神経学的予後を改善させるほどの作用はもたないことが明らかになった。組織学的所見と神経学的予後との関連性につき現在検討中である。この結果を受け、虚血4週後(長期予後)の神経学的評価および壮年ラットにおける評価は本研究では行わないこととした。 一方、本研究で用いる神経学的評価スケールについてのビデオトレーニングシステム(ビデオは英語)が英語を堪能としない日本人でも同様の教育効果を発揮するかどうかの検証もあわせて施行(UMIN ID 000030459)し、対象者の組み入れ、データ収集が終了した。こちらについては、ビデオトレーニングによってほぼnative speakerと同等の教育効果と検者間信頼性が得られることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
永久中大脳動脈閉塞ラットにおける虚血後投与イソフルランの長期(4週後)予後を成年および壮年ラットで評価することが当初の目的であったが、成年ラットの短期(1週)予後についてイソフルランが影響を与えないことが明らかとなり、長期予後の検討を行う必要がなくなってしまった(通常神経学的所見は虚血後数週かけて改善傾向を認めるため、短期予後で差が出なかったものが長期予後で差が出ることは通常ない)。なぜイソフルランが影響を与えなかったかの検証が必要であり、この検証ができれば本研究は一定の結論を得ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は組織学的所見と神経学的予後との関連性の有無を検討することを第1とする。また、臨床に近い条件で虚血開始後のイソフルランが神経学的予後を改善させなかった原因として、イソフルランの神経保護作用が足らないのか、またほかの要因が影響しているのかを確定するべく、これまでの実験と同条件で(永久虚血、一時的虚血とも)中大脳動脈閉塞を行ったラットに対し、組織中のIL-1, IL-6およびCaspase-3の分布および定量(免疫染色およびウエスタンブロットによる検出)を行う。これらの結果を学会発表、論文として公表の予定である。(報告書作成時点で新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2)による緊急事態宣言が発令されているために動物時実験が制限されており、どこまで2020年度中に施行できるかは感染症の収束状況による)。ビデオトレーニングの検者間信頼性に関する研究については成果を学会発表のうえ、早期の論文化を行う(SARS-CoV-2による国内学会中止・延期と海外学会への渡航困難のためおそらく論文化のみを行うこととなろう)。
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Causes of Carryover |
研究の進行が遅れたこと、また初年度に人工呼吸器ならびに手術道具の購入を行わずに研究を開始できたことで、次年度使用額が生じている。研究期間を1年延長とさせていただき、イソフルランがなぜ臨床的には神経学的予後に影響を与えなかったか、免疫組織学的手法を用いて検証を行う。このための免疫組織化学系物品、またそのために一定数の動物を使用する予定であり、次年度使用額は上記研究のために用いる予定である。またこれまでの研究成果を学会発表、論文化(SARS-CoV2のため学会発表は難しいと考えている)のため投稿に関する費用についても次年度使用額から使用する予定である。
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