2018 Fiscal Year Research-status Report
臓器保護指向型鎮静法の開発:デクスメデトミジンの心保護作用
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17K11053
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
原 哲也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (50304952)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 虚血再灌流傷害 / 気絶心筋 / 鎮静薬 / デクスメデトミジン / アドレナリンα2受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓血管手術などの大侵襲手術の術後管理や敗血症などの急性期重症患者管理では人工呼吸管理が必須であり、人工呼吸中の鎮静による低血圧や臓器灌流障害を契機とする多臓器不全が問題となっている。鎮静薬や鎮静法の選択は臓器保護の視点から取り組む必要があり、虚血耐性の増強効果が発揮される抗虚血効果の高い鎮静薬・鎮静法が望ましい。デクスメデトミジンはアドレナリンα2受容体に選択性が高い新しい鎮静薬であるが、その臓器保護作用はいまだ十分には解明されていない。デクスメデトミジンの心保護作用を明らかにするために、心筋虚血の前後でデクスメデトミジンを投与し、そのコンディショニング効果が気絶心筋の回復に与える影響とその細胞内機序を検討する。 ブタを用いて左前下行枝の15分間閉塞および90分間の再灌流による気絶心筋を作製し、デクスメデトミジンが気絶心筋の回復に与える影響とその細胞内機序としてのPI3K/Akt、HIF-1α、caspase-3の関与を検討する。デクスメデトミジンは虚血前および再灌流時に投与する。左室収縮機能の指標として心筋に埋め込んだ超音波クリスタルを用いた局所心筋短縮率を用いる。心保護作用の細胞内機序を解明するために、細胞内シグナル伝達に関わるメディエーターの阻害薬を用い、さらにWestern blot法で心筋組織のタンパク発現を評価する。 実験群は①デクスメデトミジン虚血前投与群、②デクスメデトミジン虚血前投与+PI3K/Akt阻害薬群、③対照群、④再灌流直前細胞採取群、⑤デクスメデトミジン再灌流時投与群、⑥デクスメデトミジン再灌流時投与+PI3K/Akt阻害薬群の6群で検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験2として,デクスメデトミジンがAkt、HIF-1α、caspase-3 の発現に与える影響を、④再灌流直前細胞採取群、⑤デクスメデトミジン再灌流時投与群、⑥デクスメデトミジン再灌流時投与+PI3K/Akt阻害薬群で検討した。 デクスメデトミジンの虚血全投与および再灌流時投与によりAkt、HIF-1α、caspase-3の発現が増加する傾向にあった。また、PI3K/Akt阻害薬によりこれらのタンパク発現は抑制される傾向にあった。 各群の頭数が6頭程度にとどまっているため、十分な統計学的検定を実施できていないが、全体の経口としては仮説に沿う結果が得られており、ほぼ予定通りの進捗状況であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
実験動物の数を増やして平成29年度および平成30年度の目標を達成する。続いて実験3として、デクスメデトミジン再灌流時投与が高血糖状態の気絶心筋に与える影響とPI3K/Akt の関与を実験1と同様な手法で検討する。 研究の進捗が芳しくなく予定通りの進行が得られず、期間内に全ての実験を終えられない場合には、実験1、2を優先して研究を全うする。
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Causes of Carryover |
計画的に予算を執行したが、わずかに2,697円が残った。残金は次年度の動物購入費に繰り入れたい。
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