2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K11056
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
上村 裕一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30211189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 孝宏 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (20593651)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミトコンドリア機能 / TNF-α / 酸素消費量 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究結果より腎臓にはα・β受容体が局在していること明らかとし、マウスへのLPS投与では炎症性サイトカインが増加しており、組織及び臓器障害に関与している可能性が考えられた。本年度においてはこれらの作用機序を明らかとするために、HEK293cellを用いた炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-1β)刺激によるミトコンドリア酸素消費量を測定することでミトコンドリア機能への関与を検討した。TNF-α、IL-6、IL-1β0.5nMをそれぞれ細胞に添加し24時間播種した後に、細胞代謝解析装置フラックスアナライザーFXpにて基礎酸素消費量、最大酸素消費量、ATP産生量を測定した所、IL-6、IL-1βでは有意な変化を示さなかった。TNF-α添加においては対照群(非添加群)と比較して基礎酸素消費、最大酸素消費量は有意に増加していたが、ATP産生量は変化がなかった。これらのことは細胞内で消費された酸素がATP産生に有効に作用せずに活性酸素産生や熱源としての放出などの非エネルギー産生に使用されている可能性が考えられた。またこれらの酸素消費量増大がに解糖系がどのように関与しているかを検討するために、解糖ストレステストを実施した。TNF-α添加においては基礎解糖、最大解糖能共に有意に増加しており解糖系の更新がミトコンドリアでの酸素消費に関与していることが明らかとなった。次にTNF-α添加にそれぞれ4種の受容体(α1,2・β1・2)作動薬を1時間前に添加して測定した。しかしながらこれらの作動薬添加では有意な変化を示さなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究予定通りに実験を行った。ミトコンドリア機能における炎症性サイトカインの影響を検討した所、TNF-αが強く関与していることを明らかとした。IL-6、IL-1βに関しては今回の実験に関しては有意な関与は認めなかったが、試薬の添加時間や濃度を変えていくことで影響することが示される可能性は高い。しかしながらこれらの検討を行う前にTNF-αのミトコンドリア機能への影響を解糖系の関与を検討することで、作用機序の面からも明らかにすることができた。4種の受容体(α1,2・β1・2)作動薬を1時間前に添加しての測定に関しては有意な変化を示すことができなかったが、まだ添加濃度に関しては予備事件の段階であり、濃度を変えていくことで今後の研究を発展させることが可能だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はTNF-α刺激腎細胞における酸素消費量に対するβ受容体拮抗薬の作用解析を行っていく。従来から敗血症治療ではカテコラミン投与で循環動態を維持することに主眼を置かれてきたが、近年敗血症においてβ受容体拮抗薬の有効性が報告されている。 β受容体拮抗薬は抗炎症作用、抗酸化作用などを介して心臓だけでなく、腎保護効果も有すると言われている。本研究ではサイトカイン刺激時における受容体拮抗薬の腎保護効果を明らかとする。またβ1とβ2では生理活性が大きくことなるので、それぞれの選択制および非選択制の受容体拮抗薬について検討していく。研究方法は培養細胞にTNF-αを添加し各種のβ受容体拮抗薬を前投与し、フラックスアナライザーでミトコンドリア酸素消費量、ATP産生量、プロトンリークを測定し、また解糖系・電子伝達系の総合的な評価を行うことで腎保護作用について明らかとしていく。近年敗血症の病態評価では乳酸値の重要性が指摘されており、本実験では細胞外酸化速度の評価も可能である。これは細胞外乳酸による酸性度を反映しているため、本研究で解糖系へのシフトから嫌気性代謝による乳酸産生の定性的評価が可能とすると考えている。
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Research Products
(3 results)