2018 Fiscal Year Research-status Report
組織因子とオートファジーに着目したNET抑制による敗血症の新たな病態の解明
Project/Area Number |
17K11064
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
下村 泰代 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (80534031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 修 藤田医科大学, 医学部, 教授 (20208185)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 敗血症 / 多臓器不全 / オートファジー / 好中球細胞外トラップス / トロンボモジュリン |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症はその約30%が死に至る難治性疾患である。敗血症の定義は臓器障害であり、臓器保護が重要な治療戦略になってくる。 本研究では、NETs(好中球細胞外トラップス)と臓器障害についての研究を行っている。 我々が確立したLPS(リポポリサッカライド)誘導型敗血症モデルマウスは、72時間後の生存率が50%と、急速な病態の悪化を呈する。このマウスから敗血症の予後を左右するターゲット臓器である肺、腎、肝臓を取り出し、免疫染色法で組織観察を行ったところ、腎、肝臓においてヒストンの散在を確認した。 NETsの構成成分であるヒストンは血管内皮傷害ならびに臓器障害を引き起こすといわれている。しかし我々は、LPS投与後にトロンボモジュリン(TM)の遺伝子組み換え製剤(リコンビナントトロンボモジュリン:rTM)を投与したマウスの臓器内でのヒストンの発現が少なくなっていることを確認した。 LPS誘導型敗血症モデルマウスにおいて、血中サイトカイン濃度は、LPS非投与群に比べ上昇していた。しかし、LPS投与後にrTMを投与すると、血中のサイトカイン濃度の上昇は認めず、また72時間後の生存率も100%と有意に改善された。このことからrTMは組織中でのヒストン散在を抑制し、臓器保護を担っている可能性が示唆された。また、我々はこれまでにin vitroにおいて、ヒト好中球のLSP刺激によるNETs形成を確認している。AutophagyがNET形成に関与している可能が示唆されており、今回は、ヒト末梢血のLPS刺激において好中球のAutophagyの発現を調査した。その結果、NETs形成には好中球のAutophagyが関与してることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年に引き続き、我々が確立したLPS誘導型敗血症モデルマウスを使用して、LPS非投与群をコントロールとし、rTM投与の有無で比較検討をおこなっている。 生存率の比較やフローサイトメトリーによる血液中サイトカイン濃度測定、ならびに肺・腎・肝臓を蛍光免疫染色法を利用したNETs構成成分であるヒストンの同定などの実験系が確立できている。 フローサイトメトリーと免疫染色において、抗体反応がうまくいかないことがあったが、その問題は解決できた。 また、ヒト末梢血液から好中球の精製と培養系も確立でき、Autophagyの発現の検討も順調に進行していることから,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症性DICでは,炎症性サイトカインやLPSなどの作用により、単球/マクロファージや血管内皮からTF(組織因子)が放出されること、炎症局所に浸潤した好中球は細胞死によりTFを放出することが報告されている。NETsは好中球の細胞死の一つでありNETosisとい呼ばれている。今後は好中球由来のTF (nTF: neutrophiltissue factor) の存在をNETsの発現と照らし合わせてながら確認していく。 またrTMよるNETs抑制機序において、好中球のTFやAutophagyが影響を及ぼしている可能性を検討していく。 今年度の結果をもとに、実験を継続し、症例数も増やしていく。
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Causes of Carryover |
抗体の反応が不良で、解析を一時中断し、学会発表も延期したため、未使用額が生じた。現在、新たに抗体を購入し、問題は解決し、研究は順調に進行している。当該年度に予定したいた研究の続きと解析、学会発表を次年度に行うため、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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