2017 Fiscal Year Research-status Report
麻酔薬によるKv1.3チャネルを介した免疫抑制作用の機序解明と予後改善戦略
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17K11067
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
外山 裕章 東北大学, 大学病院, 講師 (00375007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
風間 逸郎 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (60593978)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Kv1.3チャネル / リンパ球 / 慢性腎不全 / 腎線維化 / 片側尿管閉塞モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ球の活性化と増殖にはリンパ球に多く発現するK+チャネル(Kv1.3)の過剰発現が関与する。腎臓局所でのリンパ球Kv1.3の過剰発現に伴うリンパ球の増殖・活性化は末期腎不全に伴う腎線維化を進行させると考えられる。本研究はリンパ球Kv1.3過剰発現が末期腎不全の発症に関与していることを明らかにし、Kv1.3阻害薬による腎保護効果についても検討する。 生後6週齢の雄性SDラットの片側尿管を結紮する片側尿管閉塞(Unilateral Ureteral Obstruction: UUO)モデルを作成した。UUOモデルでは糸球体病変を伴わずに腎臓間質の線維化を生じる。また、Kv1.3阻害薬であるマルガトキシンをUUO手術後3週間に渡り連日腹腔内投与を行う、マルガトキシン投与群も作成した。UUO手術後3日目、1週目、2週目、3週目の腎臓を摘出し、対側のUUOを行っていない正常腎をコントロールとして組織学的検討に加え、免疫染色によるKv1.3、CD3、ED-1、Ki-67、Collagen-Ⅲ、α-SMAの発現量の検討、リアルタイムPCRを用いた腎組織における炎症性サイトカイン類と腎線維化のマーカーであるα-SMAのmRNA発現量の検討を行った。 両群において、術後の日数経過とともに腎間質の炎症細胞浸潤と線維化進行を認めた。Kv1.3蛋白、CD3、ED-1 、Ki-67発現は両群で差を認めなかった。本実験モデルのマルガトキシン投与量では、リンパ球・マクロファージ浸潤に対する抑制作用が小さい可能性が示唆された。しかし、術後3週目において、マルガトキシン投与群ではCollagen-Ⅲ、α-SMA蛋白の発現が減少し、α-SMAのmRNA発現量も低下傾向にあり、腎線維化を抑制している可能性が示唆された。現在、検体数を増やすとともに、3週目以降の検体についても検証を行うことにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請した実験計画では、平成29-30年にモデルラットにおける腎間質へのリンパ球浸潤と線維化に対する、リンパ球膜表面のKv1.3チャネルの役割について、免疫組織学的手法やウェスタンブロット法を用いて検討することにしていた。実際の研究の進行は、研究の方向性を探るために免疫組織学的方法にて前記Kv1.3チャネル、CD3、ED-1、Ki-67 Collagen-Ⅲ、α-SMAの組織内発現量を既に定性的に比較した。また、リアルタイムPCR法も計画通りに行っており、当初の研究計画通りに進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本実験モデルのマルガトキシン投与量では、リンパ球・マクロファージ浸潤に対する抑制作用が小さい可能性が示唆されており、マルガトキシンの投与量について検討する必要があるかも知れない。また、術後3週目において、マルガトキシン投与群ではCollagen-Ⅲ、α-SMA蛋白の発現が減少し、α-SMAのmRNA発現量も低下傾向にあり、腎線維化を抑制している可能性が示唆されており、Kv1.3と線維化の関係について検討する必要があるかも知れない。今後、検体数を増やすとともに、3週目以降の検体についての検証、マルガトキシン投与量の変更を行う予定である。検体腎皮質のホモジェナイズからのウェスタンブロットによるKv1.3チャネル、CD3、ED-1、Ki-67 Collagen-Ⅲ、α-SMAの組織内発現量定量は、マルガトキシン投与量の確定後に行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度には、平成29年度の研究結果から、マルガトキシン投与量を変えた時の結果と、長期経過での結果を検討する。また、UUOモデルでの検討と並行して、種々の麻酔関連薬剤(揮発性麻酔薬や麻薬、静脈麻酔薬)がリンパ球細胞膜表面のKv1.3チャネルをにどの様に作用するか検討する。マウスより胸腺を摘出し、単離したリンパ球浮遊液に揮発性麻酔薬(セボフルラン、イソフルラン、デスフルラン)を暴露し、パッチクランプ法を用いてリンパ球細胞膜表面Kv1.3チャネルの電流の変化を計測する。また、リンパ球浮遊液に麻薬や静脈麻酔薬を添加し、パッチクランプ法を用いてリンパ球細胞膜表面Kv1.3チャネルの電流の変化を計測する。
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