2017 Fiscal Year Research-status Report
水溶性・脂溶性に着目したスタチン系薬剤の細胞腫毎での細胞障害作用の検討
Project/Area Number |
17K11072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
張 京浩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50302708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 芳嗣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (30166748)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スタチン / 水溶性 / 脂溶性 / 炎症性サイトカイン / 細胞障害 / JNK / Akt / 生体侵襲 |
Outline of Annual Research Achievements |
単にスタチンの細胞障害作用を製剤ごとに比較するよりも、生体侵襲が加わる状況でのスタチンの細胞障害作用の有無を検討することが、周術期医療に有用と思われた。そこで、まずは生体侵襲時の病態生理・細胞内シグナル伝達経路を詳細に検討するから本研究を開始することとした。周術期の肺障害のin vitroモデルとして、ヒト肺胞上皮細胞由来のA549細胞を選択し、炎症性サイトカイン(IL-1β・TNFα・IFNγ)を投与することで24時間後に誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)やcox2の誘導を確認し、さらに、48時間後にはアポトーシスを伴う細胞死が惹起されることを確認した。その系において、細胞傷害に関わるシグナル変化として、(1)JNK/c-Jun経路の活性化、(2) Akt経路の抑制、 (3) DNA障害と関連するヒストンH2AXのリン酸化、(4) 抗酸化酵素の発現を促進する転写因子HO-1の減少等を、新しい知見として同定できた。さらに、この系においては、臨床使用に耐える有望な抗炎症薬として、デキサメサゾンとラパマイシンに着目し、それらの細胞保護効果がどのようなメカニズムによりもたらされるかを検討した。デキサメサゾンとラパマイシンはそれぞれ単独でも細胞保護効果を示したが、共投与が極めて効果的で、しかも共投与により適応濃度を十分下げられることが判明した。これは副作用の防止という観点からは大きなadvantageと思われた。さらに、その質的なrescue効果の改善には、JNKの抑制及びAktの活性化が伴うことが判明し、よって現状において、炎症性細胞障害シグナルの主要な経路としてJNK及びAkt経路に着目するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体侵襲時の病態生理を先行して検討することとしたが、JNK経路・Akt経路という2つの独立した主要なシグナル経路が、細胞障害性に関わっていることが同定できた。スタチンの生体作用を考える場合、スタチンがこれらのシグナル系にどのような影響を及ぼすかを検討することが研究の核になるめどが立った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず肺胞上皮系細胞(A549)に絞って、JNK/Akt経路へのスタチンの影響を、その脂溶性と水溶性に着目して検討することで、所期の研究目標を達成できると思われる。
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