2019 Fiscal Year Research-status Report
水溶性・脂溶性に着目したスタチン系薬剤の細胞腫毎での細胞障害作用の検討
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17K11072
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
張 京浩 帝京大学, 医学部, 准教授 (50302708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 芳嗣 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学三田病院, 教授 (30166748) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スタチン / 炎症性サイトカイン / アポトーシス / 生体侵襲 / 急性肺障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性期肺障害のin vitroモデルとして、ヒト肺胞上皮細胞由来のA549細胞に炎症性サイトカイン(IL-1beta/TNF-alfa/IFN-gamma)を共投与して、炎症反応の惹起、細胞障害、及びアポトーシスシグナルが活性化する系を採用して、研究を進めている。2018年度度までにその系において、細胞傷害性にはJNKの活性化が、また細胞保護のためにはJNKの抑制とAkt経路の活性化が重要であることを見出した。2019年度においては、脂溶性/水溶性スタチンがその細胞障害性に対してどのような修飾作用を持つかについて検討を加えた。 脂溶性スタチンとして、フルバスタチン、シンバスタチンを、水溶性スタチンとしてロスバスタチン、プラバスタチンを採用した。A549を24well plate にsubcultureし、overnightでserum reduction後、それらのスタチンを概ね1nM~10μMの濃度範囲に渡って前投与し、その後炎症性サイトカインを加えて、炎症性サイトカインによる細胞傷害性の変化を観察した。 結果として、どのスタチンにおいても、上記の実験系では炎症性サイトカインによる細胞傷害性や炎症反応を抑制せず、むしろ炎症性サイトカインの細胞障害性を増強する結果となった。スタチンの種類によりその増強効果は多少異なるものの、少なくとも、脂溶性/水溶性の違いで、生物学的効果に違いがあるとは言えなかった。以上の結果から、現状では脂溶性/水溶性の特質にかかわらず、スタチン一般として、少なくとも肺の実質細胞に対しては炎症による細胞障害を増強する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度までに、生体侵襲をシュミレートしたin vitroモデルを構築し、その系での細胞傷害性を軽減するキー分子として、JNKとAktが重要であることを明らかにできた。すなわち、炎症性サイトカインの関与する細胞障害においては、少なくとも部分的にはJNKの活性化によるアポトーシス経路が関与し、さらにその細胞障害性の軽減には、JNKそのものの活性抑制と、別途Aktの活性化によるsurvival経路の賦活が重要である知見を得たので、まずはその成果を論文として発表した。2019年度は、その系を用いて、主要な課題であるスタチンの前投与の効果を検証した。結果として、スタチン一般としての細胞障害性の増強効果を確認したが、水溶性/脂溶性の違いによる生物学的効果の違いを見出すには至らなかった。また検証した細胞種がまだ肺胞上皮細胞由来のA549の一種類であり、水溶性/脂溶性の違いにかかわらずスタチンにおいて基本的な生物学的効果に違いのなかったという今回の観察結果が、細胞種を超えて広範に正しいと言えるかどうかについても、現状では十分説得力を持っているとは言えない状況であり、この知見については学会発表も含めてまだ成果報告に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
スタチンについては近年、中枢神経機能、特に認知機能に対する影響も話題となっている。スタチンが血液脳関門を超えての何らかの生物学的効果が期待されるのであれば、肺上皮細胞以外に、何らかの中枢神経の細胞を用いて、侵襲時の生物学的効果を検討したいと着想し、研究期間の1年の延長を申請し認めていただいた次第である。培養可能で臨床的に意義深い中枢神経系細胞として新たにミクログリア細胞を照準として準備を進めており、その細胞系での結果を付加して当該年度の結果と合わせて今後発表したいと考えている。 ただし、現在懸念される事態として、この1-2ヶ月の間に新型コロナ感染症の急速な蔓延があり、特に首都圏の大学病院に付属する研究施設においては、不要不急とみなされる基礎的な研究活動が様々な事情で大きく制限される事態になっている。加えて、医師研究者にとってはエフォートの比率も大きく臨床側にシフトすることが求められている。昨年、旧所属での人事の改変による実験室の再編成もあり、今後の1年は現所属での実験室を新たに整備しての研究活動を目指していたが、現状においては新型コロナ感染症の推移を見守りつつ、上記計画のように、臨床的に意義深い中枢神経細胞に集中して計画を進めていきたいと考える。
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Causes of Carryover |
現所属施設での実験室のセットアップがまだできておらず、旧所属での実験室で登録研究員としての登録を行い実験を継続した。実験試薬・資材等はすでに購入済みのものと実験室で共用可能な予算を使用できたので結果として科研費からの支出を行わなかった。今回の予算から繰り越した助成金は、現所属施設の実験室のセットアップにまとまった金額として使用予定である。
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