2017 Fiscal Year Research-status Report
術後せん妄発生機序の解明-脳脊髄液中トリプトファン代謝物質からの検討
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17K11079
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 雅子 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (00622549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江木 盛時 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (20423296)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | せん妄 / トリプトファン代謝物質 / 心臓血管外科手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓大血管手術後の患者においては術後せん妄が高率に発生し、死亡率などの短期予後や術後の生命の質などの長期予後の悪化に関連する。これらの患者予後を改善させるためには、術後せん妄発生の予防が重要となる。しかし、術後せん妄の発生機序が不明であるため、確立された予防法はいまだに存在しない。術後せん妄の発生機序の一つとして, 麻酔や手術の影響によってトリプトファン代謝異常が生じ, トリプトファン代謝物質であるセロトニンやメラトニンなどの神経伝達物質濃度が変化することが提唱されている。しかし, この仮説を実証した研究は未だ存在しない。本研究の目的は, 心臓大血管手術患者における術後せん妄発生とトリプトファン代謝系物質の髄液中濃度との関係を明らかにすることである。 当院における胸腹部大動脈置換術患者は脳脊髄液ドレナージを術前日に行っており、これを対象とした前向き観察研究を計画した。麻酔科による脳脊髄液ドレナージ留置が行われる際に、対象患者の抽出および同意取得を行い、術後96時間以内に発生する術後せん妄の有無を観察する。術前(朝8時)・術直後・術翌日(朝8時)・術翌々日(朝8時)のトリプトファン、セロトニン、メラトニンの髄液中および血中濃度を測定する。これらのトリプトファン関連物質の推移が, せん妄発生患者と非発生患者においてどのように相違があるか検討する。また、髄液中および血中トリプトファン代謝物質と髄液中総タウ蛋白濃度との関連を検討する。 現在、院内倫理委員会での承認待ちである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
院内倫理委員会での承認が律速段階となっており、研究の進捗状況は予定より遅れている。 本研究の主たる目的は髄液中トリプトファン代謝物質を測定し、心臓大血管手術後患者におけるせん妄の発生との関連を検討することである。脊髄保護目的で留置された胸腹部大動脈瘤患者の脳脊髄ドレナージカテーテルから得た髄液を、術当日朝8時・術直後・術翌日(朝8時)・術翌々日(朝8時)のポイントにおいてトリプトファン(HPLC法)、セロトニン(ELISA法)、メラトニン(ELISA法)の髄液中濃度を測定する予定としていた。当初、院内にあるHPLC測定機器を用いて各種トリプトファン代謝物質を測定する予定だった。しかし、機器の問題で測定が困難であることが判明し、代替手段を考慮中である。現在、外注検査に提出することを方針として再審査提出予定である。 セロトニン、メラトニンの濃度測定に関してはELASAキットを購入し、測定できる状態となっている。実際に手術を行う心臓血管外科との連携も進んでおり、術前の脊髄ドレナージのカテーテル留置から、術中・術後において共同して全身管理を行っており、円滑に研究を進められる状況は整っている。 早急に院内倫理委員会への再提出および承認をめざし、研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
院内倫理委員会に再提出を行い、承認を得て早急に研究を開始する。承認され次第研究にとりかかる。 また、院内で並行して行われている研究でトリプトファンを測定する予定がある。こちらでELISAによるトリプトファン測定を行うことで、測定に必要な物品や手技などは確立されてくると考えている。院内で測定不可能と判断された髄液中のトリプトファン代謝物質に関しては院外機関に提出して測定を行う方針である。
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Causes of Carryover |
現在、倫理委員会承認待ちのため試薬や測定キットの購入を見合わせている。承認され次第、試薬・測定キットを購入し、計上する予定である。
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