2018 Fiscal Year Research-status Report
神経栄養因子の発現調節による術後認知機能障害の予防と治療
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17K11080
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小幡 典彦 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (30509443)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 術後認知機能障害 / 神経栄養因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
術後せん妄は周術期の患者予後を悪化させ、社会復帰を遅らせる原因となっている。糖尿病は術後せん妄のリスク因子として知られており、本研究では2型糖尿病モデルマウスを用いて周術期の行動変化および脳内での各種mRNA発現量変化について調べている。 2型糖尿病モデルマウスは高脂肪食(High Fat Diet; HFD)を摂食させ作製した。14週齢において手術侵襲前後での行動評価を施行した。行動はオープンフィールド、新奇物体認識試験、明暗箱試験を含む一連のプロトコールにより評価を行い、手術侵襲として開腹手術を施行した。行動実験後、脳組織(前頭葉皮質)を採取し、polymerase chain reaction (real-time PCR)を用いて、各種mRNA発現量(BDNF、ドパミン受容体:D1R、D2R、アドレナリン受容体:β1R、β2R)について解析した。 2型糖尿病群では、術前後において、オープンフィールドの総運動距離が有意に低下し、新奇物体認識試験での総探索時間が有意に減少し、明暗箱試験における移動回数が有意に減少した。つまり、2型糖尿病群では術後の低活動性が示唆された。 前頭葉皮質における術前後のBDNFはコントロール群と2型糖尿病群の間で有意差はなかったが、いずれの群も術後に有意に低下した。他の栄養因子ファミリーでの評価はまだできておらず、今後測定していく予定である。術前D1R、D2RのmRNA発現量は両群間で有意差はなかったが、術後では2型糖尿病群は対照群と比較して有意に低値であった。β1Rは術前には2型糖尿病群で有意なコントロール群の高値を認め、術後にはコントロール群および2型糖尿病群のいずれの群でも有意な増加を認めた。さらに、β2Rは術前後でコントロール群、2型糖尿病群で有意な差は認めなかったが、いずれの群も術後に有意に低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、術後モデルとして足底切開モデルの使用を予定していたが、より手術侵襲の大きい腸管manipulationモデルを採用したため、初年度にモデルの確立に時間を要したものの、それ以後はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
脳以外の組織(局所、DRG、脊髄)においても、mRNAの測定にはリアルタイムPCRを、蛋白の発現評価にはウエスタンブロット法および免疫組織化学法を用いて、神経栄養因子および他の関連物質の発現変化を比較、検討する。発現変化がみられた各部位において、神経栄養因子や他の関連物質の発現調節を試みる。さらには、オープンフィールド試験、新奇物体認識試験、明暗箱試験、高架式十字迷路を用いて認知機能評価を行う。最終的には安全性の確認を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画よりも実際にはやや遅れが生じたことにより、試薬や動物の購入数が計画よりも少なくなったため、次年度使用額が生じた。次年度に遅れを修正することで使用可能と思われる。
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Research Products
(2 results)