2017 Fiscal Year Research-status Report
新規糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬の心保護作用への影響と細胞内機序
Project/Area Number |
17K11086
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
一ノ宮 大雅 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50404249)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | SGLT2阻害薬 / 薬理学的心筋プレコンディショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
新規糖尿病治療薬であるSGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害薬は従来の治療薬と全く異なる薬剤特性に加え、大規模臨床研究で心血管死イベント発生を減少させたことから、臨床で非常に注目されている。一方で、SGLT2と同じくSGLTのサブタイプであるSGLT1は心筋にも存在し、SGLT1の抑制は虚血再灌流障害における内在性心筋保護効果を減弱させるとされている。SGLT2阻害薬の選択性は個々の薬剤で大きく異なるため、SGLT2阻害薬の種類や投与量による心血管イベントへの影響は糖尿病治療における薬剤選択の上で重要な要素となり得る。本研究は、SGLT2阻害薬が虚血再灌流障害における内在性心筋保護効果へ与える影響を検討し、薬理学的心筋保護法の開発およびその分子細胞学的機序を明らかにすることを目的として行っている。 平成29年度はラット心筋虚血再灌流モデルを用いて、虚血プレコンディショニングの前にSGLT1阻害薬(フロリジン)を投与することで、その影響を検討した。 300~350gの雄性SDラットを使用し、コントロール(C)群、虚血プレコンディショニング(IP)群、虚血プレコンディショニング+フロリジン(IP+F)群の検討を行った(各群 N=7)。虚血危険領域に対する心筋梗塞範囲はC群:47.9±8.8%、IP群:23.2±6.7%、IP+F群:44.2±9.3%であった。この結果から、虚血プレコンディショニングの心筋保護効果はSGLT1阻害作用の強いフロリジンにより消失することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SGLT2阻害薬の入手に時間が掛かったため。 薬剤は既に手に入っており、その後の実験は概ね順調に進行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、SGLT2選択性の高いSGLT2阻害薬を用いて虚血プレコンディショニングへ与える影響およびに関する実験を進める。またSGLT1阻害により虚血プレコンディショニングによる心筋保護効果が抑制されることが平成29年度の研究で明らかとなったため、各種阻害薬や電気泳動等を行うことで機序の解明を行う。
|
Causes of Carryover |
研究に若干の遅れがあり、物品購入費が少なくすんだため。今後予定通り研究を進めるため、虚血再灌流の実験に使用する試薬や消耗品の購入費に残額も使用予定である。
|