2018 Fiscal Year Research-status Report
Analgesic mechanisms and Myotoxicity of Local Anesthetics for Laparotomy.
Project/Area Number |
17K11106
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 聡 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60293510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布施谷 仁志 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (00588197)
杉山 由紀 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (10468100)
川真田 樹人 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90315523)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 局所麻酔薬 / 術後痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年では、術前から抗凝固療法を行う患者が増えた。周術期の鎮痛目的で、硬膜外麻酔などの中枢神経系に近い部位を穿刺し局所麻酔薬を投与することを避け、より末梢で局所麻酔薬を投与することが増えてきた。末梢部位で局所麻酔作用を発揮するためには、比較的大量の局所麻酔薬を必要とするが、神経ブロックを目的とした局所麻酔薬の筋組織と創部修復に与える影響は明らかになっていない。本研究の目的は、筋切開部位に投与された局所麻酔薬の、炎症や組織修復に与える影響を調査することである。 本研究ではラットを用いて、開腹時に創部周辺に局所麻酔薬を投与した際の筋組織の状態を評価した。麻酔下に腹部に長さ2センチの切開を作り、臨床的に広く用いられているロピバカイン、生理食塩水、切開のみの群にわけ、切開縫合5日後に腹部筋組織を光学顕微鏡で観察した。 HE染色の結果は、5日後にはどの群も肉眼的に切開した筋組織は修復傾向にあった。0.75%ロピバカインの4日連続投与群では、0.25%ロピバカイン4日連続投与群、生理食塩水4日間連続投与群と比較して筋組織修復部位への炎症細胞が多い傾向がみられた。また、0.75%ロピバカイン1日投与群、0.25%ロピバカイン1日投与群、生理食塩水1日投与群では、筋層組織への炎症細胞の浸潤はあるものの、0.75%ロピバカイン4日投与群に比べて軽度であり、3群間で明らかな違いはなかった。 平成30年度は、ロピバカインの投与濃度と投与回数に依存して、回復期にある炎症細胞浸潤の程度が変化することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで高濃度局所麻酔薬が正常筋組織に与える影響を調査した報告はあるが、筋損傷部位に局所麻酔薬を投与し、その影響を調査した報告はなかった。局所麻酔薬として、現在良く用いられているロピバカインを用いた。これに関しては、臨床に即した薬剤であったと考える。腹部切開部位への局所麻酔薬の投与により、ロピバカインの濃度と投与回数により炎症細胞の浸潤の傾向が異なることが明らかになった。これは平成30年度の成果であり、その点はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
筋切開後には、炎症―>増殖―>組織修復の過程を経る。これまで切開した筋修復4~5日後の状態を調査してきたが、長期的な影響を評価するためには、7日~10日後の腹部筋層の調査が必要である。現時点では炎症細胞の光学顕微鏡を用いた評価にとどまっている。炎症だけでなく、神経組織に与える局所麻酔薬の効果も免疫染色により調査する。
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、平成31年度請求額と合わせて使用する予定である。実験動物、抗体、薬剤の購入に充てる予定である。
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