2018 Fiscal Year Research-status Report
Functions of bladder muscularis mucosae during storage phase as a new therapeutic target
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17K11187
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
橋谷 光 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10315905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 信之 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (30722748)
三井 烈 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90434092)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膀胱 / 粘膜筋板 / 交感神経 / 自発収縮 / アンジオテンシン |
Outline of Annual Research Achievements |
膀胱粘膜の収縮要素である粘膜筋板について、形態学的存在の種差(ヒト、ブタ、モルモット膀胱に存在、マウス、ラット膀胱には存在しない)およびブタ粘膜筋板の神経性収縮制御の部位差比較(排尿筋、三角部、尿道)に関する研究成果を投稿し、現在リバイス準備中である。粘膜筋板は、排尿筋に比べて自発収縮が顕著である一方、副交感神経性収縮が微弱であり、排尿収縮には関与せず蓄尿期において粘膜要素(尿路上皮、粘膜血管、求心性神経)の過伸展を防ぐ役割が示唆される。トロンボキサンA2アナログにより持続性収縮を生じた状態において、経壁神経刺激により粘膜筋板および排尿筋において神経性弛緩反応が観察されたが、この反応は交感神経伝達遮断薬であるグアネチジンおよびβ受容体阻害薬であるプロプラノロールにより抑制されなかった。粘膜筋板においては神経性弛緩はニトロアルギニンにより阻害されたことから一酸化窒素によると考えられたが、排尿筋ではニトロアルギニンにより阻害されなかった。免疫染色では、交感神経は粘膜層、排尿筋層とも血管にのみ分布し、粘膜筋板および排尿筋には分布していなかった。この結果から、広く誤認されている交感神経による直接的な筋弛緩は排尿筋のみならず粘膜筋板においても認められず、交感神経による蓄尿促進機序としては、これらの収縮要素以外を考える必要があることが再確認された。 粘膜筋板は排尿筋に比してアンジオテンシンIIへの収縮応答性が100倍以上大きく1nMから収縮を生じることが明らかになり、2つの収縮要素を薬理学的に識別できる可能性が得られた。機能的な違いに対応して、免疫染色法によるアンジオテンシン受容体の発現も、粘膜筋板では排尿筋に比べ強いことが明らかになった。この結果は豊富な血管網を有する膀胱粘膜に存在する粘膜筋板が、血中アンジオテンシンIIの作用により収縮する可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘膜筋板を有する種はヒト、ブタ、モルモットであるので、現実的には粘膜筋板を対象とした実験はサンプルが容易かつ豊富に得られるブタ、モルモットに限定される。今年度はブタ膀胱を用いて粘膜筋板と排尿筋の収縮特性について機能的実験を行い、その結果を裏付ける形で免疫染色を行なうことができた。今年度の収縮実験から得られた結果をもとに、次年度は電気的活動、カルシウムシグナルの観察に発展させ、またアンジオテンシン以外の内在性物質への応答についても検討できる基盤が整った。 一方でモルモット膀胱での、Ca2+感受性およびアクチン重合についての粘膜筋板と排尿筋との比較実験は進展せず中断となった。 当初の計画にはなかったが、膀胱壁内血管のカルシウムシグナルを可視化できるレポーターマウスを使った研究が可能になった。また膀胱粘膜の間質構成要素である線維芽細胞を標識できるレポーターマウスを使った研究も可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き主にブタ膀胱を用いて、粘膜筋板と排尿筋との電気的活動、カルシウムシグナルの比較、各種内在性収縮制御物質への応答を調べる。また粘膜血管を含めて、すでに臨床応用されているβ3受容体作動薬、PDE5阻害薬の作用を比較し、これらの薬剤の膀胱壁内標的を探る。 当初研究計画には含まれていなかったレポーターマウス(GCaMP)が入手できたため、膀胱血管のカルシウムイメージングを行うことが可能となった。また以前より保有しているPDGFRα-eGFPマウスを用いて、粘膜および排尿筋層におけるPDGFRα陽性細胞の機能を調べ、膀胱壁線維化における役割を探る。マウスでは粘膜筋板は存在しないが、粘膜の間質の表層と深層では細胞構築(線維芽細胞とコラーゲン成分)が異なることが知られている。また粘膜筋板が存在しないため粘膜血管の観察が容易である。そうした特性を生かして、粘膜筋板の周辺細胞の機能を調べる。
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Causes of Carryover |
比較的高額な抗体や消耗品を使用するウェスタンブロッティングを含む実験計画について、成果が見込めない可能性が高く継続を中止した。またほとんどの実験をブタ膀胱(食肉処理施設から購入、単価500円)で行なったため、大幅に支出が抑えられた。さらに、本研究計画に関連して取得した他の財源が単年度決済で繰越使用できないものであったため、それらを優先して使用したことも、次年度使用額が発生した理由である。 次年度ではブタおよびモルモット膀胱での蛍光免疫染色、機能的実験における試薬購入などに使用する。また標本作成用の実体顕微鏡、カルシウムイメージングシステムの光源などが老朽化しているため、これらの修理や更新に使用する。
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Research Products
(7 results)