2017 Fiscal Year Research-status Report
移植臓器に対する液性免疫反応評価のための新規免疫モニタリング法の開発
Project/Area Number |
17K11200
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 佳子 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (90790303)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 亮一 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (40456976)
高原 史郎 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70179547)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | メモリーB細胞 / In vitro アッセイ系 / IgM型ドナー特異的HLA抗体 / IgG型ドナー特異的HLA抗体 / ドナー特異的IgM型メモリーB細胞 / ドナー特異的IgG型メモリーB細胞 / 個別化免疫抑制療法 / 抗体関連型拒絶反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は末梢血中を循環する、ドナー抗原特異的メモリーB細胞のアイソタイプの存在比とドナー抗原に対する液性免疫反応の賦活化との関連性を解明し、各メモリーB細胞の臨床における検出意義を明らかにした。結果、ドナー抗原に対する抗体反応の活性化と末梢血中でのドナー抗原特異的IgM/IgGメモリーB細胞の存在比が関連しており、B cell receptorを介した抗原抗体反応の賦活化とともにドナー抗原特異的IgMメモリ-B細胞のIgGへのクラススイッチが促進されることが示唆された。上記にもとづいて病態の進展に応じてより個別化された、免疫抑制療法を確立するためにIn vitroでIgM型メモリ-B細胞のIgM型形質細胞への分化とIgGメモリ-B細胞へのクラススイッチを介してIgG型形質細胞への分化を誘導するアッセイ系を確立した。これらのアッセイ系にてエベロリムス,セルセプト,タクロリムス,シクロスポリン,プレドニゾロンの各分化段階における感受性の確認を施行した。結果、メモリ-B細胞の各分化増殖段階により、各免疫抑制剤の感受性が異なること、現在のプロトコールに従った免疫抑制療法ではドナー特異的IgM型メモリーB細胞のIgG型形質細胞への分化が十分に抑制されていない可能性が示唆された。以上より、現在のT細胞を標的とした免疫抑制療法はさらに個別化される必要があり、ドナー特異的IgM型メモリ-B細胞のIgM/IgG形質細胞への各分化段階に応じた免疫抑制療法の確立が必要であることが明らかになった。 今年度の研究費は主にIn vitroアッセイ系の確立のための試薬類の購入、臨床検体の解析に費用をあてた。 またこれらの結果を移植免疫の分野にて論文発表をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にもとづき、In vitroにおいてはIgG/IgM型メモリーB細胞を抗体産生細胞まで分化誘導可能なアッセイ系を確立することで末梢血中を循環する、ドナー特異的IgG/IgM型メモリーB細胞の抗原抗体反応に関連した病態との関係を明らかにした。つまり、培養上清からのIgM型ドナー特異的抗体の検出が病態進展の予測因子としての意義を有すること、IgG型抗体とともに解析することでより、詳細にドナー抗原抗体反応の活性化レベルが評価可能なことが示唆された。さらにIn vivoにおいても臨床検体をretrospectiveに解析することでドナー特異的IgM型メモリーB細胞の抗体関連型拒絶反応の早期診断法としての可能性を明らかにすることができた。また現在の免疫抑制療法においてはT細胞関連型拒絶反応はほぼ制御されているがドナー抗体に関連した抗体関連型拒絶反応は移植長期予後にとり、移植臓器廃絶の原因である。よってより,ドナー抗体産生に直接関与するメモリ-B細胞分化増殖系における薬剤感受性試験が必要と考えられる。我々は先述のIn vitroアッセイ系を用いてメモリ-B細胞各分化段階における、各免疫抑制剤の感受性の違い、T細胞を介さない直接作用について比較検討した。よってin vitroの結果より、IgM/IgG型ドナー抗体を効率よく産生を予防可能な免疫抑制療法が明らかになった。 以上より、ドナー特異的IgM型メモリーB細胞の抗体関連型拒絶反応早期診断のためのバイオマーカーとしての役割とIn vitroにおける薬剤感受性の結果より、IgM/IgG型ドナー抗体産生予防への効果が期待される、個別化免疫抑制療法を明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
In vivoにおける臨床検体の解析はretorospectiveに行ったが今後はプロトコールに従い、より定期的に臨床検体の採取と臨床情報の収集を行うことで末梢血中のドナー特異的IgM/IgG型メモリーB細胞分化の移植臓器予後への影響、抗体関連型拒絶反応発症との関連などについてのデータを蓄積していく予定である。 またIn vitroにおける薬剤感受性のIn vivoにおける効果の違いを比較検討し、よりT細胞、炎症細胞、B cell receptorからのシグナルを考慮した免疫抑制療法の確立を目指す。さらにドナー特異的IgM型メモリーB細胞からIgM/IgG型形質細胞への分化を促進する環境因子、治療介入すべきドナー特異的IgM/IgGメモリーB細胞の特徴などを明らかにする。 よって以上の結果に基づき、より早期に抗体関連型拒絶反応の発症を予測し、病態に応じて個別化された免疫抑制療法を導入をおこなう。さらにこれらの治療介入による、抗体関連型拒絶反応発症などを含めた、移植臓器への影響も比較検討していく予定である。
|
Causes of Carryover |
研究の遂行上、研究費の繰り越しが必要であったため。
|
Research Products
(5 results)