2018 Fiscal Year Research-status Report
体細胞に着目した精子形成メカニズムの解明と男性不妊症治療への新規開拓
Project/Area Number |
17K11203
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
神谷 浩行 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (00311910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 孝周 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40326153)
水野 健太郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (70448710)
岩月 正一郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (70595397)
梅本 幸裕 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (80381812)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 男性不妊症 / Sertoli細胞 / Leydig細胞 / 遺伝子導入 / SCO |
Outline of Annual Research Achievements |
男性不妊症における補助生殖医療技術の進歩は著く、顕微鏡下に精巣内精子を採取する手術(MD-TESE)は標準治療となった。しかし実際の精子が見つかる確率は30%前後である。MD-TESEにおいて、体細胞であるSertoli細胞やLeydig細胞は存在するが、精子どころか精子細胞あるいは精母細胞すらみつからない症例が50-70%存在する。それらは精細胞を維持する体細胞の機能不全によるものと考えられる。そのため精子そのものの精細胞ではなく、体細胞であるSertoli細胞およびLeydig細胞をターゲットとした治療が必要と考えた。そこで本研究では、精細胞と体細胞の相互のシグナル伝達経路および精子形成に関連する遺伝子を同定し、無精子症である男性不妊症の治療の開発に応用することを目的とした。 まずは正常精巣での体細胞の分離を行う。その際にFACSやパーコール法があるため効率の良いほうをおこなう。そのうえで造精機能障害モデル動物を作成する。その中での体細胞を分離を行い、その細胞に増加あるいは減少した遺伝子検索を行う。またその中の液性成分を確認する。その上で男性不妊症患者に同様な病態が起きているかを確認する。同様な病態が確認された動物モデルの精巣から遺伝子検索を行う。その遺伝子が判明したところで、その遺伝子を作成する。その遺伝子を当教室が確立している電気刺激あるいはアデノウィルスヴベクターを用いて、遺伝子欠損しているモデル動物の精巣に遺伝子導入を行う。 そこに精子形成が確認できれば、その遺伝子が不妊関連遺伝子となり、導入自体が治療につながる。これは体細胞に着目するため、次世代へ伝播する心配はないということがメリットである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年正常細胞からの体細胞であるLeydig細胞とSertoli細胞の分離から始めた。FACSを用いての細胞分離を行った。正常マウスからの精巣組織を使用したが、細胞数が少なく、複数回行っても一定結果が得られなかった。このためラットの精巣を使用した。しかし同様に結果が均一にならない。そこでFACSを用いての細胞分離は、分離高率に安定性がないこと、コンタミが大きすぎることが問題と考えられた。 このため、次にパーコール法での分離を試みた。パーコール法では分離層が多数でてくるため、コンタミが問題となる。その中で複数回行うことにより、よりLeydig細胞の層はほぼ確立してきた。一方Sertoli細胞の分離も同様に行ったが、Leydig細胞と違って、Sertoli細胞の単独での分離は難しいことが判明した。このため体細胞の分離代表としてLeydig細胞に重点を置いての研究を行うこととした。 Leydig細胞は70%以上の確率で分離が行えることが判明した。このため現在モデル動物作成に移行している。抗がん剤を使ってのモデル、およびLH-RH analogを用いての男性不妊症、また手術による停留精巣モデルを作成した。4週後、8週後、12週後での精巣の病理学的変化をまずは検討した。 精細管内での造精機能障害を確認したところ、精子形成の減少が観察された。このためこの造精機能障害について検討した。そこで間質の浮腫が引き起こされていることに着目した。そこでは炎症系の反応が起こっていると考えられ、現在各種サイトカインの変化をPCRおよび染色で確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は体細胞のなかでもLeydig細胞に着目し、不妊症モデル動物を作成していく。具体的には、①先天異常モデル(フルタマイド投与による)である停留精巣動物、②ホルモン異常モデル(LH-RH analog投与による)、③抗がん剤(ブスルファン)投与モデル、これらのモデル動物から造精機能障害精巣を作成する。今までのところ②のモデルからの検体のみ研究が行えている。①に関しては現在作成中である。③については造精機能障害が強すぎてややモデルに供しえない。しかし②および①のモデルでのマイルドな造精機能障害から得られた知見があれば、③のようび程度の強い障害精巣での判明が期待できる。 ①のモデル動物が作成できたところでパーコール法を用いて細胞分離を行う。Leydig細胞における遺伝子増加、減少、いずれかの変化を確認する。その特異的な遺伝子変化をPCR法にて確認する。これで②との比較を行う。 そこで判明した欠損遺伝子が判明できる。その遺伝子を作成し、モデル動物精巣に電気刺激およびアデノウィルスベクターを用いて精巣に導入する。その後造精機能改善の有無を確認する。同時に導入遺伝子が精細胞に残存していないかどうかを確認する。それには再度細胞分離の必要がある。 一連の動物での遺伝子異常や液性免疫での変化が確認できると、同じ変化が人の男性不妊症の精巣に起きているかを比較する。そうすることでその精巣での造精機能障害の原因が特定できれば今後の無精子症治療における治療方法に結びつく可能性が考えられる。
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Research Products
(3 results)