2017 Fiscal Year Research-status Report
T細胞亜集団の偏りを生むHLA・A/B抗体と内皮細胞応答:抗体陽性移植の新機軸
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17K11209
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
岩崎 研太 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (10508881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 孝彰 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70314010)
三輪 祐子 愛知医科大学, 医学部, 助教 (90572941)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移植免疫 / CD4 T細胞 / アロ応答 / PD-L1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドナーHLA class IIに反応するレシピエントCD4 T細胞の直接認識(direct recognition)によるアロ応答は、非常に強いT細胞応答であり、移植臓器に対する拒絶反応の原因となる。移植後、特に慢性期ではグラフト細胞発現HLAがその標的となるが、その反応については必ずしも明らかではない。本研究では内皮細胞HLA-DRに応答するCD4 T-細胞クローンを同定後、anti-HLA class Iもしくはanti-A/B抗体存在下でのそのクローンの挙動について検討した。内皮細胞HLA-DR反応性CD4 T細胞はメモリー型であり、特にTh17とTfhは強く反応した。このCD4 T細胞増殖は、内皮細胞にanti-HLA class Iが結合時には亢進し、anit-A抗体結合時には減弱した。シングルCD4 T細胞解析により、TCRβの出現頻度が2%を超えるクローンが10個存在し、その中でも11%と最も高い頻度を示したTCRβは、増殖が最も亢進していた画分で確認された。マイクロアレイ解析により、IFNgamma処理に関わらずanit-A抗体接着時に遺伝子変動を認めた遺伝子として、CD275 (PD-L1)が同定された。PDL-1はanti-A/B抗体接着で内皮細胞での発現上昇がみられ、anti-PD-1使用で、anti-A抗体による細胞増殖抑制効果が消失した。ABO不適合腎移植における組織において、PD-L1は高値であった。内皮細胞HLA-DRに対するCD4 T細胞直接アロ応答は、内皮細胞に結合する抗体の種類で変動することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
移植においては、肝臓を構築する類洞内皮細胞でPD-L1が高発現であり、このことが肝移植でたびたび見られる免疫寛容誘導に重要であるという報告もある。今回ABO不適合移植患者の腎組織においてPD-L1が高発現であり、anti-PD-1抗体で、anti-A/B抗体接着によるCD4 T-細胞のアロ応答減弱がキャンセルされたことから、ABO不適合腎移植においては、このPD-1-PD-L1の重要性を示唆する結果となった。PD-L1自身は組織においては炎症状態で容易に誘導される。炎症状態の内皮細胞は活性化状態にあるため、anti-A/B抗体接着によるPD-L1の発現制御は、これまでの研究から内皮細胞の活性低下が起因であると推察される。一般的にT細胞におけるPD-1の発現は、定常状態ではそれほど高くはなく、活性化すると誘導し、PD-1とPD-L1との相互作用によりT細胞の活性化は抑制される。また、PD-L1はCD80と相互作用することが可能であり、その結果、T細胞の活性化が抑制されることも報告されている。Tregにも発現が確認されており、免疫抑制メカニズムの一つとされている。これらのことから、anti-A/B抗体接着により内皮細胞内シグナル伝達が制御されることで、PD-L1が誘導され、その結果内皮細胞HLA-DR応答性CD4T細胞のうち、PD-1陽性細胞の活性化が抑制されることが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
臓器移植においてrecipient T細胞はdirect/indirect recognitionの2種類の反応を介して活性化する。これらの反応は、移植後二次リンパ組織で起こるとされているが、げっ歯類の研究においては、移植後速やかにdonor 由来のAPCが処理されるため、Direct recognitionは短命であることが報告されている (Cell report 2016)。内皮細胞のHLA class IIは誘導性たんぱく分子である。ヒト内皮細胞はげっ歯類と異なり、IFNγで活性化させるとCD4 T細胞を活性化することが報告されている (JCI insight 2017)。本研究では、Direct recognition pathwayに関わるCD4 T細胞の挙動とその重要性、DSAの影響について研究を行った。今後さらなる検討知見を得るためには、実際の移植臓器でのメカニズム解明が必要となる。特に実際の腎組織に浸潤しているT細胞の機能解析が必要になる、つまり、ABO不適合/適合腎移植において、腎組織でのPD-L1の高発現がどの程度の患者で確認できるのか、またその際に浸潤T細胞のサブセットに偏りが生じているのか。またそれらクローンは移植前に同定可能なのかどうかの研究を進めることで、免疫順応のメカニズム解明から治療法へとつながるはずである。
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Causes of Carryover |
次世代シークエンサーを利用する予定ではあったが、機器の不調のため当該年度に行うことがかなわなくなったため。
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Research Products
(1 results)