2017 Fiscal Year Research-status Report
胎盤異常に着目した独自の周産期障害モデルマウスの解析
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17K11213
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森岡 裕香 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 講師 (00360264)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胎盤異常 / 周産期障害 / プロテインキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究により、PKXを欠損したトロフォブラスト細胞 (TB) では、野生型TBと比較してリン酸化AKTの発現が著しく亢進する事が明らかとなっている。本年度は、PKXによるAKTリン酸化制御機構の解明を目的として、TBならびに胎盤組織を用いた解析を実施した。具体的な成果を以下に示す。
①TBを用いたAKTアイソフォームの解析:AKT1から3のうち、どのアイソフォームのリン酸化がPKX欠損の影響を受けるかを検討した。TBにはAKT1から3の全てが発現しており、いずれも野生型とPKX欠損でトータル量に差はなかった。一方で、リン酸化体に着目すると、PKX欠損により全てのアイソフォームで発現が亢進する事が明らかとなった。 ②胎盤組織でのAKTリン酸化の解析:ウエスタンブロット解析ならびに免疫染色により、TBと同様に胎盤組織においても、PKX欠損によりAKTリン酸化が亢進することを明らかにした。 ③PKXによるAKTリン酸化制御機構の解明:AKTのリン酸化メカニズムについては盛んに研究されており、既知の制御因子が多く報告されている。PKXはプロテインキナーゼであるが、その「欠損」によりAKTのリン酸化が上昇するという結果から、PKXが直接的にAKTをリン酸化するわけではない。そこで、PKXが、a) PI3KやmTORC2といったAKTリン酸化を促進する因子の活性を増強している。または、b) 脱リン酸化酵素PTEN、PP2A、PHLPPなどのAKTリン酸化を抑制する因子の活性を減弱させている。といった可能性を検証した。どの因子がPKX欠損の影響を受けるかを調べるために、TBタンパク溶液中の各因子の活性を測定したが、いずれも野生型とPKX欠損で差が認められず、PKXによるAKTリン酸化制御機構の解明に繋がる手がかりは得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必ずしも期待通りの結果は得られなかったが、計画していた研究は予定通りに遂行した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にPKXによるAKTリン酸化制御機構の解明を試みたが、AKTのリン酸化に関わることが報告されている既知因子の解析からは、有用な手がかりが得られなかった。 2年目は、野生型胎盤とPKX欠損胎盤に存在するリン酸化タンパク質をプロテオミクスで網羅的に比較する予定である。本解析では、PKXの直接的な基質の同定を大きな目標としていたが、AKTリン酸化に関与する情報の収集も同時に行うよう計画を修正する。
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