2019 Fiscal Year Research-status Report
HLA class Ⅱ複合体抗体による不育症、妊娠合併症の新診断・治療法の確立
Project/Area Number |
17K11235
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山田 秀人 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40220397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出口 雅士 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (50403291)
谷村 憲司 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (80593988)
蝦名 康彦 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (90322809)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不育症 / 抗リン脂質抗体症候群 / 抗リン脂質抗体 / ネオ・セルフ抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、aβ2GPI/HLA class Ⅱ測定法の不育症の原因検索や重症度診断における有用性を明らかする。また、HLA class Ⅱの新しい機能を応用し、不育症を引き起こす未知の抗原を探索する。ミスフォールド蛋白/HLA class Ⅱ複合体に対する自己抗体の新検出法が、抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断や不育症の原因精査に有用かを調べる。この複合体抗体に起因する不育症の新たな治療法を開発し確立することを目的とする。また、検査法の標準化と汎用化のために、ELISAプレートやビーズを用いた測定法を新たに開発する。 今年度の研究実績を下に記す。 目的:不育症患者のaβ2GPI/HLA-DR7複合体(ネオ・セルフ)抗体と不育症との関係を明らかにすることを目的とした。対象と方法:2回以上の流産ないし1回以上の死産の既往がある不育症女性227人を対象とした。流死産歴無し、生産歴あり、抗リン脂質抗体(aPL)陰性、自己免疫疾患無しの女性208人をコントロールとした。コントロール女性の血清の99%ile を基準値として、対象でaβ2GPI/HLA-DR7抗体価を測定した。結果:52.6 U/mlが基準値となった。不育症女性227人中、52人(22.9%)が、aβ2GPI/HLA-DR7抗体陽性であった。不育症の原因/リスク因子が不明の121人中24人(19.8%)で、またAPS症状があるが基準aPLが陰性の114人中22人(19.3%)において、aβ2GPI/HLA-DR7抗体が陽性であることが初めて明らかになった。結論:これまで原因/リスク因子不明とされていた不育症女性の19.8%で陽性になったことから、aβ2GPI/HLA-DR7複合体抗体は、新たな不育症の原因である可能性が示された。前向きコホート研究や介入研究の臨床試験によって、因果関係の決定が今後期待される。Arthritis & Rheumatologyに投稿、リバイス中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の下記の1-6のうち、順調に1と2の成果をあげている。3~6については進行中である。 1.不育症、血栓症、妊娠合併症既往の女性において、前方視的に血清中aβ2GPI/HLA-DR7抗体価を測定し、不育症、血栓症、妊娠合併症のリスク・原因および重症度の診断に対する有用性を明らかにする。 2. 不育症、妊娠合併症既往の女性とその配偶者のHLA class Ⅱアリルを調べ、個々のアリルに一致したHLA class Ⅱとβ2GPIの複合体に対する自己抗体の抗体価を測定し、不育症の病態と新しいHLA class Ⅱの抗原提示機能の関連性について調べる。 3. aβ2GPI/HLA-DR7に起因する不育症、妊娠合併症既往の女性に適した治療法を探索し開発し確立する。4.ELISAやビーズを用いたフローサイトメトリーでaβ2GPI/HLA-DR7を測定できるような汎用性が高い系を新たに開発する。5.β2GPI 以外のaPLの標的抗原であるプロトロンビン(PT)とHLA class Ⅱの複合体に対する自己抗体についてもAPS患者、もしくは、不育症、妊娠合併症既往の女性の血清中に存在するかを調べ、それらの病態、重症度との関連を解明する。6.HLA class Ⅱの新しい抗原提示機能を用いて、不育症、血栓症・妊娠合併症の原因となる未知の抗原(ミスフォールド蛋白)を探索する。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究を継続し、今年度中に完了する。 1)さらに、不育症、血栓症や妊娠合併症既往の女性において、前方視的に血清中のaβ2GPI/HLA-DR7抗体価を測定し、不育症、血栓症や妊娠合併症のリスク・原因および重症度の診断に対する有用性を明らかにする。 2)不育症、妊娠合併症既往の女性とその配偶者のHLA classⅡアリルを調べ、個々のアリルに一致したHLA classⅡとβ2GPIの複合体に対する自己抗体の抗体価を測定し、不育症の病態と新しいHLA classⅡの抗原提示機能の関連性について調べる。 3)aβ2GPI/HLA-DR7に起因する不育症、妊娠合併症既往の女性に適した治療法を探索し開発し確立する。 4)ELISAやビーズを用いたフローサイトメトリーでaβ2GPI/HLA-DR7を測定できる汎用性が高い簡易キットを新たに開発する。
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Causes of Carryover |
HLA検査費用の支出が年度内に全てを完了することができなかった。このため、その分は次年度で支払うことになった。検体測定キットの開発研究が、新型コロナウイルス感染症の影響で、順調に予定通りは進まなかった。
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Research Products
(15 results)