2018 Fiscal Year Research-status Report
糖脂質を用いた流早産に対する新規治療法の開発-自然免疫を中心として-
Project/Area Number |
17K11255
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
根岸 靖幸 日本医科大学, 医学部, 講師 (50644580)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / iNKT細胞 / 流産 / 早産 / 無菌性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
絨毛膜羊膜炎(CAM: chorioamnionitis)は流早産発症の主な原因と考えられている。しかしながら近年このCAMを有しない多くの流早産症例が指摘されており、これら症例は無菌性炎症に起因する可能性があるものの現時点では原因不明に分類せざるを得ない。本研究では感染を伴わないマウス流産モデルを用いて、そのメカニズムと予防法を自然免疫を中心とした観点から研究を行っている。これまで申請者らは、妊娠マウスに糖脂質であるα-GalCer(α-galactosylceramide)を投与し無菌的に流産を誘導、このメカニズム解析を行っており、α-GalCer投与は、子宮筋層にiNKT細胞(invariant natural killer T)とDEC-205陽性樹状細胞の有為な集積を伴、う有為なマウス流産発症を引き起こす事が示している(Eur. J. Innumol., 2016)。さらにこれらの細胞が実際に流産を引き起こすか否かを検討するため、妊娠マウスへDEC-205陽性樹状細胞とiNKT細胞の養子免疫実験を試みたところ、これら養子免疫により有意なマウス流産が誘導された。すなわち糖脂質によって活性化された自然免疫系の細胞が直接流産の原因となり得る事が見出され、その結果は論文にまとめられた(Eur. J. Immunol., 2018)。現在、これら糖脂質によって誘導された流産を予防する物質を検索中である。一方ヒト早産胎盤では、CAMを伴わない脱落膜でもDEC-205陽性樹状細胞とiNKT細胞の集積を認めており、この結果は論文にまとめられた(Am. J. Reprod, Immunol., 2017)。さらにiNKT細胞と樹状細胞、マクロファージ上のCD1d、TLR4発現の相関も見出されており、学会発表としてまとめられた(国際胎盤学会2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究期間において、無菌性炎症と流早産発症について以下に示す論文を3編報告している。 ①自然免疫担当細胞であるDEC-205陽性樹状細胞、またiNKT細胞の養子免疫により妊娠マウスに有為な流産を誘導し、そのメカニズム解析をおこなった(Eur. J. Immunol., 2018)。②ヒト早産胎盤より得られた脱落膜中には、CAMを伴わない場合、DEC-205陽性樹状細胞とiNKT細胞の有為な集積を認めた(Am. J. Reprod, Immunol., 2017)。③自然免疫と生殖免疫についての総説(J. Obstet. Gynecol. Res. 2018)。また本研究期間内において関連した学会発表も行っている(日本生殖免疫学会:2017年、2018年、米国生殖免疫学会:2018年、日本胎盤学会:2017年、国際胎盤学会:2018年、日本免疫学会:2017年、2018年、日本産科婦人科学会:2019年(予定)) 以上の進展状況により、当初の計画以上に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、α-GalCer誘導流産を予防する物質として日常臨床で使用される薬剤について検討している。この薬剤は一般的に抗炎症作用を有し切迫早産治療として日常診療で使用されるものの、その作用機序、作用点は不明な点が多い。現時点で、この薬剤は抗原提示細胞、特に樹状細胞のimmunostimulatory activityを低下させる知見を得ている。本研究機関最終年度にあたり、自然免疫の活性化によって誘導される流産を予防できる方法、物質を見出しそのメカニズム解明を行う事を目標とする。
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Causes of Carryover |
現在、本研究は予定通り進行しているが、マウスの流産モデルにおける解析の中で、新たな抗体の組み合わせ、測定すべきサイトカイン、細胞内転写因子の検索が今後追加・必要になる可能性があり、本年度は最小限、適材適所の試薬購入を行った。ゆえに次年度使用額が生じたものと考える。
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[Book] 臨床生殖免疫学2018
Author(s)
柴原浩章(編著)
Total Pages
708(うち申請者担当はp101-105)
Publisher
中外医学社
ISBN
ISBN978-4-498-06088-3