2018 Fiscal Year Research-status Report
カニクイザルを用いた危機的産科出血に対する子宮動脈塞栓術の基礎的研究
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17K11257
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
五十嵐 豪 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (00386955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒井 保典 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (40621420)
橋本 一樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (30528386)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 産科危機的出血 / カニクイザル / 動脈塞栓術 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:産科危機的出血に対するNBCA(n-butyl cyanoacrylate)を用いた経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)の質を向上させるため、霊長類であるカニクイザルを用いた基礎的研究により塞栓後の血管や子宮の組織学的変化や影響を解明することを目的とした。 方法:動物実験施設の倫理委員会承認のもと、4歳のカニクイザル3頭を使用し実験を行った。全身麻酔後にカテーテルを頸動脈から挿入し、最初に尾を含め骨盤内に血流を多く流入している正中仙骨動脈をコイルで塞栓した。次に両側左右の内腸骨動脈から子宮動脈を5倍希釈したNBCAで塞栓を行った。経時的な造影CT検査により子宮の造影効果を評価した。塞栓後1カ月に1頭、1年後に2頭の子宮を摘出し組織学的評価を行った。 結果:塞栓後の造影CT検査では、1週間後に平衡相、1か月後には動脈相で子宮の造影効果を認め血流の回復を確認した。組織学的検査では、3頭とも子宮に明らかな壊死像は認めなかった。塞栓後1年で摘出した子宮動脈内にNBCAを認めた。しかし、その近傍にEVG染色やCD31免疫染色により染色された内弾性板と血管内皮細胞を認めたことから、新たに動脈が再疎通したことが確認された。塞栓後1カ月の子宮動脈では動脈の再疎通は認められなかった。 結論:カニクイザルを用いたNBCA による子宮動脈塞栓では、塞栓後も側副血行の発達により子宮内の血流が確保され、1年後には塞栓された血管が再疎通することが明らかとなった。産科危機的出血に対して、NBCAによるTAEは安全に使用できる可能が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カニクイザルに採血を行い、動脈塞栓術前から後まで経時的に卵巣機能を評価することを計画していたが、ヒトと同様に卵胞刺激ホルモンやエストラジオールの値を測定してもすべて感度以下となってしまった。カニクイザルに適した設定でのホルモン値の測定を行う必要があり、今後検討する。また、カニクイザル自体が高価なため、5頭づつでの比較検討はできないと判断した。実際にこれまで3頭が実験後に失血等により死亡し経過観察ができなかった。頭数を減らしての比較になりそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに8頭のカニクイザルを使用し実験を行った。これまでの結果を英語論文にまとめるにあたり、予算の関係上さらにカニクイザルを購入し実験を継続することは困難である。これまでのデータをまとめ、最低3本の論文にまとめるつもりである。
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Causes of Carryover |
カニクイザルの女性ホルモンの採血ができなかったことと、予定よりもサルの購入頭数を減らしたことから余りが生じた。論文の作成を集中して行う予定であり、そのための学会での聴講も含め使用する。
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