2017 Fiscal Year Research-status Report
生体親和性多孔性膜(ハニカム膜)による卵巣癌の新規治療と診断法の開発
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17K11267
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
太田 剛 山形大学, 医学部, 講師 (50375341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永瀬 智 山形大学, 医学部, 教授 (00292326)
清野 学 山形大学, 医学部, 助教 (40594320)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / ハニカム膜 / 腫瘍形成 / 細胞サイズ / 細胞接着 / circulating tumor cell |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では卵巣癌の診断・治療における新たなdeviceとしてハニカム膜を用いて、初回手術時の残存腫瘍にハニカム膜を貼付することで残存腫瘍を消失させ手術侵襲を低くすること、circulating tumor cell (CTC)をターゲットとした卵巣癌再発・転移の早期診断法を確立することを目指す。 将来的な臨床応用を考え親水性と柔軟性が高い素材であるpolyurethane(PU)を用いてハニカム膜を作製し、in vivoでハニカム膜による腫瘍増殖抑制効果の検討を行った。5~7週令のメスヌードマウスの皮下に卵巣癌細胞(2×106)を注入し、腫瘍径が10mmに達した時点で、麻酔下でマウスに皮下切開を加え、形成した腫瘍表面にPU平膜、PUハニカム膜(孔小(5-8μm)、孔中(8-12μm)、孔大(12-16μm))をそれぞれ貼付し、皮膚を縫合した。コントロールは手術操作を加えないマウスとした。卵巣癌細胞SKOV3ip1ではコントロールと比較してハニカム膜孔大で有意差を持って腫瘍増殖を抑制した。卵巣癌細胞ES2ではコントロールと比較してハニカム膜孔小で腫瘍増殖を抑制する傾向がみられた。SKOV3ip1とES2の細胞面積と核の直径を解析したところ、SKOV3ip1では細胞面積が1000~2000μm2、核の直径が15~20μmでES2では細胞面積が300~500μm2、核の直径が10~15μmであり細胞のサイズがハニカム膜孔径による腫瘍増殖抑制能と関連があるのではないかと考えられた。さらにSKOV3ip1とES2では細胞接着能が異なるのでハニカム膜のよる腫瘍増殖能と細胞接着能との関連について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハニカム膜が卵巣癌細胞の腫瘍形成を抑制し、さらに細胞のサイズによって最も腫瘍形成を抑制するハニカム膜孔径が異なることが明らかになった。ハニカム膜による腫瘍抑制の機序としては細胞接着との関連を予測しており、ハニカム膜に対する細胞接着形態を検討するためアクチン(細胞骨格)とビンキュリン(細胞膜裏打ちタンパク質)で蛍光免疫染色を行い、共焦点でレーザーでの観察を行った。ES細胞ではビンキュリンが局所で強く発現しているのに対して、SKOV3ip1では細胞全体で発現しているという結果を得ているが、ハニカム膜の孔径によるビンキュリンの発現状態は検討中であり、さらなる実験が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験結果からin vivoにおけるハニカム膜の腫瘍形成抑制効果はES2とSKOV3ip1で孔径によって異なることが分かり、これは細胞の大きさによるものであることが推察された。さらにin vitroの実験でSKOV3ip1とES2ではハニカム膜に対する接着形態に違いがあることがビンキュリンの発現を検討することで明らかになった。現在まで細胞接着に関連した因子としてはビンキュリンのみの検討であり、今後さらにSKOV3ip1とES2における細胞接着に関連した遺伝子の発現をマイクロアレイ法で網羅的に解析する予定である。マイクロアレイによって候補遺伝子を同定し、knockdownまたはoverexpressionさせることでハニカム膜への細胞接着形態やハニカム膜の細胞増殖形成抑制効果にどのような影響を与えるかについても引き続き検討を行いたい。 また、ハニカム膜の生体親和性素材や孔径を変えることで細胞によって接着能が異なる特性を利用することで癌細胞と血液細胞の分離が容易となり、より効率的なcirculating tumor cell (CTC)の同定が可能となるのではないかという着想をもとにした研究は現在導入段階である。
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Causes of Carryover |
今年度はハニカム膜の効果を確認する実験が主であったため。 次年度使用額は、ハニカム膜の腫瘍増殖抑制効果のメカニズムを解明するため細胞培養用の培養液やディッシュ類、immunoblotting、蛍光免疫染色法による蛋白発現やPCRによる遺伝子発現の解析の抗体や測定用キットの購入に使用する。 またマイクロアレイのデータや蛍光免疫染色の画像解析ためにハイスペックコンピューターが必要であるため設備備品費として使用する。
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