2018 Fiscal Year Research-status Report
卵巣明細胞腺癌におけるChIPシークエンスを用いた網羅的解析と新規エピゲノム創薬
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17K11268
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
曾根 献文 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90598872)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エピジェネテックス / ヒストンメチル化酵素 / WHSC1 / SMYD2 / エピゲノム治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣癌は婦人科癌の中で最も予後不良である。特に明細胞腺癌 (Ovarian Clear Cell carcinoma : OCCC )は欧米で5%と低頻度であるのに対し、日本では卵巣癌の約24%を占め、抗癌剤耐性であり予後不良である。ヒストンメチル化はエピジェネティックスの主要因子であり、ヒストンメチル化酵素/脱メチル化酵素がそれを司り、遺伝子発現を調節している。様々な癌腫でヒストンメチル化酵素/脱メチル化酵素の発現の亢進が報告され、ヒストンメチル化酵素と脱メチル化酵素の均衡の破壊が癌の進展と密接に関わっていることが明らかとなった。上記よりヒストンメチル化酵素、脱メチル化酵素が卵巣癌、特にOCCCを対象とした新規治療法となり得ると考えた。臨床検体において発現解析を行い、発現が亢進しているヒストンメチル化酵素を同定した所、卵巣明細胞癌では2種類、卵巣漿液性癌においては8種類のヒストンメチル化酵素の発現亢進が認められた。その中で卵巣明細胞癌はヒストンメチル化酵素WHSC1、卵巣漿液性癌はSMYD2に着目した。卵巣明細胞癌においてWHSC1をノックダウンするとヒストンメチル化の減少とともに、細胞増殖抑制が認められた。またヒストンメチル化酵素EZH2をノックダウンするとWHSC1が抑制されることから、ヒストンメチル化酵素同士の関連も明らかとなった。上記研究は現在論文投稿中である(BMC cancerin revision). また卵巣漿液性癌細胞株においてSMYD2をノックダウンするとアポトーシス誘導とともに細胞増殖抑制が認められた。またSMYD2選択的阻害剤を添加すると細胞増殖抑制が認められ、SMYD2が卵巣漿液性癌の治療標的であることが示された(Biochemical and Biophysical Research Communications,2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣明細胞癌、卵巣漿液性癌における治療標的となりうるヒストンメチル化酵素を同定し、 現在その下流遺伝子を同定するためChIP-seq法の準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
エピジェネティックスは遺伝子制御機構の最上層で機能しているため、1つのエピゲノム発現亢進や変異が多くの遺伝子の発現様式に影響を与える。癌化においてヒストンメチル化がどのように多くの遺伝子の発現に作用しているか未だ解明されていない。ChIP(Chromatin immunoprecipitation:クロマチン免疫沈降)シークエンス法を用いてOCCC細胞株及び臨床検体双方から網羅的に調べることにより、OCCCにおけるエピジェネティックから見た発癌メカニズムを包括的に解明する。WHSC1の標的であるH3K36メチル化にてChIPシークエンス法をRNA-seqとともに行い、WHSC1が作用する下流遺伝子、パスウエイを解析する。OCCA細胞株、臨床検体双方から解析し、相関するかどうかを検討する。また卵巣漿液性癌においても同様の検討を行う。ARID1A変異におけるEZH2阻害剤のように、メチル化酵素/脱メチル化酵素の発現異常以外にもバイオマーカーが存在する可能性がある。次世代高速シークエンサーによりエピゲノムをターゲットとした合成致死作用をもたらすバイオマーカーを同定する。またエピゲノム創薬がどのような下流遺伝子、パスウェイに作用し薬効を示すかも、はっきりわかっていない。これについてもChIPシークエンス法により網羅的解析を行うことにより解明を目指す。
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Causes of Carryover |
これまでの研究については比較的費用が掛からない実験系だったので、当初の予定より 使用額が低く済んだ。次年度の研究は本研究で最も重要であるChIP-seq法を用いた実験であり、使用額も大きくなる見込みである。
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Research Products
(4 results)