2020 Fiscal Year Research-status Report
癌特異的プロモーターと磁性ナノ粒子を応用した婦人科癌における末梢血中腫瘍細胞解析
Project/Area Number |
17K11270
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
高倉 正博 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (20313661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前之園 信也 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00323535)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 末梢血中腫瘍細胞 / テロメラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
末梢血中腫瘍細胞(circulating tumor cells: CTC)は癌の新規バイオマーカーとして、またliquid biopsyの手段として注目を集めているが、その検出方法や応用法はいまだに発展途上である。現在主流の細胞膜表面抗原に頼った検出方法では様々に姿を変える癌細胞を捉えきれていないのが現状である。我々は癌の不死化能に着目し、不死化関連酵素であるテロメラーゼの活性化を指標として癌細胞を検出・分離するシステムを構築することを目標とする。さらに磁性ナノ粒子を応用して従来は不可能であった生細胞の回収・解析を可能とすることも目的としている。昨年度までにウイルス非依存的CTC検出システム構築のためにhTERTプロモーター下流にβ-integrin膜貫通ドメインと人工タグタンパク質であるHalotagの融合タンパクを発現するようにデザインしたプラスミドを作成し、対象細胞にエレクトロポレーション法で導入する系を確立した。これによってhTERTプロモーターが活性化されている細胞では細胞膜上にタグ蛋白が発現される(Surface Tag-protein expressed in tumor cells: STET)。 今年度はさらにSurvivinプロモーターを用いたSurvin-STETも作成しhTERT-STETと併用することでテロメラーゼ低発現あるいは陰性細胞にも対応できるように改善を施した。正常血液に培養癌細胞を一定数混入させたCTCモデル検体での癌細胞検出感度は約80%に向上した。 現在、所属施設の倫理委員会に登録し臨床検体での末梢血中腫瘍細胞検出実験を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. STETベクターの構築と導入方法の検討 hTERTプロモーターを用いたSTET(Surface Tag-protein expressed in tumor cells)導入効率(Halotagリガンド-GFPによる蛍光標識での陽性率)は80~95%、細胞の生存率は75~100%であり、十分実用に耐えうるものと考えられた。 1. 正常血液を用いたコントロール実験 昨年度までに開発・検討したSTETベクターのマルチパルス式エレクトロポレーション法による導入を、正常血液に培養癌細胞を一定数混入させたCTCモデル検体において、癌細胞検出実験を行った。STET発現細胞は蛍光標識リガンドを用いてFACSによる検出と回収を試みた。混入させた癌細胞の検出感度は約50%であった。実用にはやや低い検出率であったため、hTERTプロモーターと同様にがん特異的プロモーターとして知られているSurvivinプロモーターを組み込んだSTET(Survivin-STET)を作成し従来のhTERT STSETと併用することでテロメラーゼ低発現あるいは陰性細胞にも対応できるように改善すると同時に、導入条件を調整して約80%の検出感度を得ることができた。 2. 臨床検体での検討:CTCモデルサンプルを用いたコントロール実験で良好な検出感度が得られたことにより臨床検体でのCTC検出ならびに回収を試みる。我々の過去の検討ではCTCの多くは上皮マーカーの発現を欠いていた。これが癌の浸潤転移に関与している可能性を踏まえて、上皮間葉転換(EMT)に関わる因子の発現、原発巣に追加して起こる変異の有無などを解析することを目標とする。今年度はコロナ禍の影響もあり外来での検体収集を断念し来年度の目標とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1. コントロール実験:ナノ粒子磁性体とHalotagの特異的リガンドの結合体による回収を試みる予定である。回収には当初は顕微鏡下のマイクロマニピュレーターを使用予定であるが、適宜自動化するためにMACS(magnetic activated cell sorting)を用いたプロトコールを構築する。 2. 臨床検体での検討:所属機関の倫理委員会の承認のもと、がん患者、非がん患者を対象に臨床検体でのCTC検出ならびに回収を試みる。第一の目標はCTCのがんバイオマーカーとしての有用性の検討である。CTC出現の有無、CTCの個数による診断的意義、化学療法感受性ならびに予後との関連を解析する。第二にはCTCを単離解析することにより婦人科がんの浸潤転移に関わる因子を明らかにすることを目標とする。近年、急速に進歩している単一細胞を対象としたゲノムシークエンシングならびにRNAシークエンシングなどを応用予定である。 3. CTCモデルマウスの作成 臨床検体で得られたCTCにおける遺伝子発現のデータと癌の浸潤転移の関連を調べるためには動物実験モデルが重要となる。免疫不全マウスでは癌の血管内移行が容易に起こることが知られており、この目的には適していない。正常免疫マウスの胎生期にヒト癌細胞を接種することでヒト細胞に対する免疫寛容を惹起し、出生後、ヒト癌細胞接種モデルを作成する系が近年報告された。我々はこれを応用してマウス血中のCTCを回収検討する系を作成することを目指す。
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Causes of Carryover |
本年度はCTC検出法確立のためのin vitro実験が主体であり、CTC観察のための顕微鏡を新規購入したが、試薬・消耗品の使用は少なく経費がかからなかった。 使用計画:臨床検体での検討に関しても同様に多量のプラスミド生成などの必要が生じるため試薬の購入費用が必要である。また論文作成のための英文校正料、投稿料も必要になると考えられる。
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Research Products
(1 results)