2018 Fiscal Year Research-status Report
骨髄由来免疫抑制細胞と卵巣癌幹細胞による癌免疫逃避機構の解明とその克服
Project/Area Number |
17K11276
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬淵 誠士 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00452441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00452392)
橋本 香映 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90612078)
松本 有里 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (90756488)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MDSC / 癌幹細胞 / 治療抵抗性 / PD-L1 / 抗腫瘍免疫 / 卵巣癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、「卵巣癌において、MDSCが癌幹細胞化を促進し、MDSCと癌幹細胞が協調しながら免疫寛容を誘導し、免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性を示す」と考え、これを証明すべく研究を行ってきた。平成29年度の研究において、①MDSCが卵巣癌の癌幹細胞化を促進すること、②癌幹細胞は非癌幹細胞に比べPD-L1の発現が亢進していることを確認した。これらの事実は、MDSCが何らかの因子を放出し、癌幹細胞化を促進して治療抵抗性に寄与するとともに、抗腫瘍免疫を負に制御している可能性を示唆する結果と解釈できる。 平成30年度は、MDSCの癌幹細胞誘導効果をIn vivoで検証するとともに、MDSCが放出する癌幹細胞化促進因子の同定を目指した検討を行った。マウスから抽出したMDSCと卵巣癌細胞を共培養した場合と共培養しない場合を設定し、それぞれの条件を比較することで、①MDSCがプロスタンディンE2(PGE2)を分泌すること、②MDSCから分泌されたPGE2が卵巣癌の幹細胞化を促進すること、③MDSC-PGE2-癌幹細胞axisが、卵巣癌のみならず、子宮頸癌や子宮体癌にも存在すること、④PGE2の産生阻害薬であるセレコキシブを用いれば、MDSCによる癌幹細胞誘導作用を効果的に抑制できること、を見出した。 平成29-30年度の研究により、MDSCが免疫チェックポイント阻害薬の効果を減弱している可能性が示唆されるため、平成31年度は、MDSC阻害治療による癌幹細胞化の抑制が、①化学療法・放射線治療の治療効果を増強するか、②免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強するか、について研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MDSCが卵巣癌の癌幹細胞化を促進するメカニズムにPGE2が関与すること、MDSCに対する中和抗体またはPGE2産生阻害薬であるセレコキシブによってMDSCによる癌幹細胞化を抑制できることが確認できた。さらに、MDSC-PGE2-癌幹細胞axisが、卵巣癌のみならず、子宮頸癌や子宮体癌にも(普遍的に)存在することも確認できた。これらは、本研究の仮説の証明と、臨床応用を行っていく中で重要な部分であり、この証明に時間を要すると考えていた。平成31年度は、MDSC阻害治療の臨床応用を目指し、その効果についての前臨床研究を行うが、MDSC阻害に用いる薬剤の一つであるセレコキシブは、鎮痛薬として日常診療で広く使用されている薬剤であるため、その使用にあたっての制限がなく、実験はスムースに遂行できる。以上より、研究は概ね計画通り進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、まず、MDSC阻害治療による癌幹細胞化の抑制が、①化学療法・放射線治療の治療効果を増強するか、②免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強するか、について研究を行う予定である。実験には二種のマウス卵巣癌モデル(MDSC増加モデルおよびコントロールモデル)を用い、これにMDSC阻害治療(抗Gr-1抗体またはセレコキシブ)、免疫療法(抗PD-1抗体: Nivolumab)、またはMDSC阻害治療+免疫療法を行い、抗腫瘍効果を比較するとともに、癌幹細胞の消失効果も比較する。我々の研究グループはこれらのマウスモデルを既に樹立しており、実験はスムースに遂行できると考えている。これらの研究に加え、MDSC阻害治療の効果を予見するバイオマーカーの探索も実施したい。我々は、これまでの研究により、腫瘍内に多数のMDSCが侵入している症例がMDSC阻害治療の併用による恩恵を受けると予測しており、これを上述の二種のマウスモデルを用いて検証したいと考えている。
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Research Products
(8 results)